コラム 『明鏡止水』

城北信用金庫メールマガジンJ's B-press
タイトル 『J's B-press』 掲載号
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J's B-press VOL.132(2024.03.29)

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コラム『明鏡止水』 ~ 鳥居ユキさんの「温故知新」~

今年81才になるファッションデザイナーの鳥居ユキさん。
日本のプレタポルテ(高級既製服)の草分けのお一人、
今も、年2回のコレクションで新作を発表し続けていらっしゃいます。
パリコレのデビューは30代といいますから、流行を発信し続けて半世紀、
まぎれもない現代のスーパーレディです。

今も一流であり続けられる理由は、パリのマダムたちから学んだシックな美意識、
「古いものは捨てない。着こなし方や装飾品の工夫によって変化をつけながら
大事に使い続ける」そんなパリでの生活経験が原点なのだとおっしゃいます。
一方で、新しいことに挑戦するのも大好き。
今でも、見習って「いいな」と思ったことは素直に取り入れるそうです。
習ったこと、気づいたことは、手近にある紙片にすぐメモをして残すようにして、
今日まで経験したことを、明日からのデザインに余さず活かしているとか。
「昔のことをよく研究して、そこから新しくチャレンジし、出発すること」
「温故知新」という言葉は、
「斬新さを創り出すために古い伝統を学ぶ必要性」を体現している、
鳥居ユキさんのデザインそのもののような気がします。

さて、紙片に「メモを取り書き残す」という鳥居さんの方法、
今のお若い世代にお聞きすると、
「スマホやPCのメモ帳に入力しておきます」とおっしゃいます。
タグをつけてジャンル別に整理しておけば、
後からキーワード検索するのもすっごいラクですよ~、なんて。
でもねぇ、年齢を重ねるにつれて、家族やお友達のつきあいが増えて、
仕事の量も増えて、趣味も増えて、タグも増える一方・・・
どのタグに整理して、どこに保存したのか、分からなくなることってありません?
確かに、スマホやPCは、人間の記憶力が太刀打ちできないほどの
メモリーを持っていますが、日々刻々と増え続ける情報量、
「私は大丈夫!」そうおっしゃるあなたの頭脳も、近い将来オーバーフローして
PCを立ち上げることもできなくなる・・・ ということだってあるのですよ。

古きを残し新しき姿にリボーンさせる鳥居さん、
気づいたことは「紙片に書き残す」とおっしゃっています。
紙に書き残したものは、中身を忘れても、バラバラぼろぼろと引っくり返せば
きっと見つかります。
また、手書きの効能として、全体像を把握して理解しやすくなるとか、
脳が整って思考力が高まる、という話もよく聞きます。
手書きの習慣が記憶力をアップさせる、という研究結果も多く報告されています。

以前に「PC公害?漢字が書けなくなった」というテーマを取り上げましたが
ちょこちょこメモするという形ででも
書くという習慣を取り戻せればいいのですが。

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J's B-press VOL.131(2024.02.29)

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コラム『明鏡止水』 ~ カスハラに屈するな ~

まぁなんでも「ハラスメント」とつければ現代語になる世の中です。
顧客が従業員に対し、過度な要求や理不尽なクレームを繰り返すことを
最近は「カスタマーハラスメント(カスハラ)」と呼ぶようになりました。
2023年12月には改正旅館業法が施行され、カスハラに当たる要求を行った人、
例えば、ささいなことに難癖をつけるお客や、不当な要求を繰り返し
クレーマーとして二度と来てほしくないお客、このような迷惑客の宿泊を、
旅館やホテル側が断ることができるようになりました。
さらに2月20日の東京都議会では、小池都知事が「カスハラ防止条例」を制定する方針を表明しています。

カスハラ事例としては、2014年におきた「ナッツリターン事件」が有名です。
財閥会長の長女が、大韓航空機のファーストクラスでナッツの出し方に難癖をつけ、客室乗務員に怒鳴り散らしたあげく、チーフパーサーを降ろすよう要求して
飛行機を搭乗口まで引き返させた、という事件でした。
以前日本航空でも、離陸時に携帯電話の使用をやめるよう再三注意されて
逆ギレした乗客のために、1時間近く出発が遅れたという事件がありました。

腰の低さがサービスの根底にある我が国のビジネスでは、理不尽な難癖でも
落としどころを探り、妥協してしまう商慣習があったことは否めない事実です。
都条例の改正が、こんな悪しき慣習を打破することになればいいのですが・・・。

歴代の政権が繰り返し唱える「貯蓄から投資へ」、年間投資枠の拡大や非課税枠の
恒久化が図られた新NISAの導入で、いやでも人々の投資意欲は膨らみます。
連日報道される半導体バブル、株価が数年で倍増、増配などとはやされれば
今まで株や投信に興味のなかった人も手を染めたくなります。
新NISA開設の申込が急増し、担当者を増員した金融機関もあるとか。
日経平均は史上最高値を更新、1989年頃の狂乱バブルとそっくりです。

株に投信に債券に、浮かれて揺れ動くにわか投資家の皆さん、
上がったものはいつか下がります。限りなく上がり続けるなんてあり得ません。
その昔、バブル崩壊、サブプライム危機やリーマンショックの終戦処理に
苦労した方たちは、数多くのカスハラに泣きました。
「儲かるって言ったじゃないか!」顧客の激しい攻撃に耐え切れず、
法律違反と知りながら損失補填に走った証券会社もありました。
高まる投資熱に水を差すつもりはありませんが、あとでカスハラの嵐が吹き荒れないことを切に祈ります。
契約時はしっかり納得していただいたのに、年月が経ち「こんな契約、
した覚えはない!」とか、ご相続人から「金融機関が誘導した契約では?」
とクレームがつくとか・・・ 長寿社会でもあり、なかなか難しい問題です。

世の中で、カスハラに当たる行為が増えた原因は、明らかにSNSの普及で、
利用者側の発言機会が増え、それをまた深く考えずに提灯をつける連中がいて、
波紋があっという間に広がってしまうからです。
信用金庫の営業スタイルもまた、腰の低さがサービスの根底にありますが、
落としどころという言葉に隠された「事なかれ主義」は、遠い過去の話です。

このコラムのタイトルは「明鏡止水」、
たたえた水は曇りのない鏡のごとくまっ平らで溢れることなく、
どんなことがあっても常に心がブレない、冷静沈着な状態をいいます。
信用を基礎に運営する信用金庫、当たり前のことではありますが、
日々正しい仕事を沈着冷静に積み上げることが、最大のカスハラ防御策です。

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J's B-press VOL.130(2024.01.31)

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コラム『明鏡止水』 ~ へそ ~

スキニーなジーンズ、Tシャツをまくり上げたり、タンクトップで、
おへそを出してさっそうと歩く女性を街でよく見かけます。
細身の方が多いのですが、中にはちょっとだぶつき加減の方も・・・。
いえ、別にスタイルの話ではありません。
おへそを出す流行って、いつの頃からなのか? が話題です。
ヒップホップやポップミュージックのアーティスト、
映画やドラマの俳優・女優たちが、おへそを強調するファッションを披露し、
若者たちの間で瞬時に流行したのはY2Kの頃といわれています。
女子プロゴルファーのへそ出しウェアが登場したのもその頃です。
昔気質のおやじゴルファーが「はしたない!」と怒ったのは、
ほんのわずかな期間でした。

さて、他人さまの前にさらけだすおへそ、色つや形が気になるところです。
理想の形として一番人気は「縦長」「小さい」、
おへそが縦長になることで、若くスマートな印象になるのみならず、
ビキニやへそピアスなどが一番映えると人気の的なのです。
またおへそは位置も大切。骨格・筋肉・脂肪の差によってその位置が変わります。
おへその位置が少し上になるだけで脚が長く見えるし、逆に位置が下がれば
ぽっちゃりと見えたりします。今じゃへそ整形も人気だとか。
赤ちゃんの時にお母さんとつながっていた名残りのおへそ、出べそで格好悪い、
そんな方もおへその形はいわば伝統の美なのです。
文句があるならカエルに生まれてくればよし、カエルは卵で生まれますから
お母さんとへその緒で会話しなくても済みます。だからおへそがないんです。

そんなおへそですが、かつては、胃や腸、胆のう、肝臓等の手術といえば
お腹の真ん中をまっすぐ切り開いて行う「開腹手術」が一般的でした。
近年は腹腔鏡(内視鏡)手術が急速に普及し、多くの手術がおへそを切り開き
そこからカメラを入れて行われています。患者の負担が著しく軽減され、
回復も早く、おへその役割が改めて見直されているのです。

おへそにちなむ言葉、少し考えてみましょう。
「へそを曲げる」 これは気分を害することや怒ることを指す表現です。
大したことじゃないのに、相手の言葉や態度が原因で口を利かない、
いい加減にしたら? よく見かけますよね、最初っから曲がりっぱなしの方も。
「へそが茶を沸かす」 非現実的であり信じがたいことを指して使われます。
ちゃんちゃらおかしい、ばかばかしくて仕方がない、という嘲りの意味です。
ちょっと難しい言葉ですが「臍下丹田」(せいかたんでん)、ことを成す時は
ここにグイッと力をこめろという意味です。大願成就の秘訣でもあります。

最後に、おへそのお手入れの話を少しだけ。
放っておくとへそ奥に黒いゴミ、へそのゴマを見つけることがあります。
入浴時にぬるま湯で優しくへその周りを洗い、石鹸や洗浄剤で汚れを取り除きます。
洗った後は、十分に乾かし水気が残らないようにしましょう。
しかし、取れないからと必要以上にこすると、炎症を起こしヒリヒリ痛みます。
「ゆっくり丁寧に」が原則です。へそのゴマ退治法でした

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J's B-press VOL.129(2023.12.29)

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コラム『明鏡止水』 ~ 冬に冷やし焼きいもはいかが? ~

来年は辰(龍)年、龍は古来より中国で権力の象徴とされ、
縁起の良い生き物とされています。
昇り龍のように上昇気運の年であることを期待したいと思います。

さて、その昔、夜の銀座には屋台の焼きいも屋が出ていました。
その風景を再現したいと、数年前、銀座7丁目に焼きいもの路面店がオープン、
買いに来るのは、夜のビジネスに精を出す銀座のキレイどころです。
売れ筋は焼きたてのホクホクかと思いきや、人気は冷やし焼きいも。
北風の舞う師走の街なのに、なぜか「冷たい焼きいも」です。

先月の「おでん」にも、たくさんの方(特に女性)からお便りを頂きましたが、
おでん同様「焼きいも」も、日本の伝統的な食べもののひとつですね。
サツマイモの起源は古く、メキシコ近辺が原産のようですが定かではありません。
1600年ごろ中国から薩摩に渡来したので薩摩芋、今でも国内の収穫量トップは
鹿児島ですが、温暖な茨城・千葉でも品種改良が加えられ生産されています。
ベニハヤト、ベニアズマ、ジョイホワイト、エレガントサマー、アヤムラサキetc.
色や甘味で異なるようですが、このネーミング、とてもイモとは思えません。

焼きいも屋台の古典的キャッチコピーは「栗(九里)より(四里)うまい十三里半」、
寒い冬の夜、「い~し~焼ぁきいも~」の音声に
外に飛び出した経験をお持ちの方も、少なくないと思います。
ところがこの焼きいも、自宅の電子レンジや蒸し器で作っても、
屋台のように、ホクホクした甘みのある芋にはなりません。
実は、サツマイモは低温で長く加熱することによって、
ベータアミラーゼという成分が麦芽糖を生成し、甘みが増していくのです。
作り方は主に2種類、石焼きとつぼ焼き、どちらも直火で炙るわけではありません。
石焼きの石は砂利状の溶岩石、それを熱し中に芋を埋め込み、
小一時間ほどじっくりと時間をかけ、蒸し焼きにして仕上げます。
つぼ焼きは壺の上部に芋を吊るし、壺の底に炭火を入れ2~3時間、
170~180度で加熱し焼き上げていきます。
焼き上げ時間は石焼きの倍以上、手数のかかるぶん、
つぼ焼きの方が甘みが増して美味しいといわれています。

今日のメインテーマは冷たい焼きいもです。
アツアツの焼きたてをふぅふぅ食べるのも焼きいもの醍醐味ではありますが、
暖房がガンガン効いてる冬の部屋で、密のとろける冷たい焼きいも、
一度お試しになって下さい。病みつきになりますよ。

「銀座つぼやきいも」は銀座7丁目、並木通りから1本入ったところにあります。
高さ1メートルほどの「つぼ」で焼いたサツマイモのみの販売ですが、
毎晩クラブのおねぇーさんたちの予約でいっぱい。
「まるごと」「はんぶん」「ちいさいの」の3種類、テイクアウト専門です。
一流クラブのホステスさんやお客さまたちが、一本数万円もする超高級ボトルの
肴に召し上がるのが冷たい焼きいも、溢れる蜜(人の手によって塗り込められた
蜜です)、なんともジャパニーズの雰囲気が漂っていますよね?

秋から冬にかけての季節食材、手軽な食材として親しまれている焼きいも、
甘くてほくほくした食感、今晩は焼きいも、冬の風物詩のひとつです。

一年間のおつきあいありがとうございました。心より感謝申し上げます。
どうぞよいお年をお迎えください。

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J's B-press VOL.128(2023.11.30)

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コラム『明鏡止水』 ~ 冬は「おでん」もよし ~

師走の声と共にやっと暮らしい寒さになり、鍋が恋しい季節になりました。
今月は、冬場になると食べたくなる方の多い「おでん」を採り上げてみました。
「おでん」、もともとは「田楽」に端を発する食べもののようです。
田楽は、豊作を願って歌や踊りを奉納する農村の伝統芸能ですが、
串を刺した長方形の豆腐が、丸太を使った田楽の舞姿に似ていることから
串焼きの豆腐を「でんがく」と呼び、味噌をつけて食べる習慣ができたとのこと。
でんがくの「でん」に女房詞の「お」をつけて「おでん」、
庶民のファストフーズのはしりだったのかもしれません。
現在の煮込みスタイルになったのは江戸中期、醤油造りが盛んになってから。
熱々の出汁に入ったおでん種、誕生の由来はこの程度にしておきましょう。

当金庫赤羽支店のお取引先に、SNSでは超有名な「千ベロ」の雄、
おでん専門店「丸健水産」があります。
東口一番街の中にあるお店は朝10時半営業開始、
おでん鍋から立ちのぼるプロの出汁の香りが、食欲を、呑みごころを誘います。
おでんの出汁や具はご当地によって千差万別、醤油の色の濃さが目立つ関東流、
薄口醤油で具が見えるあっさりの関西流、他にも九州、沖縄、四国、名古屋、
いろいろ違いがあるようです。
もちろん丸健水産は関東流、具もはんぺん・ちくわぶ・つみれ等が鍋に溢れます。
ちなみに関西の具は「ひりゅうず」と呼ばれるがんもどき、厚揚げ、タコの足、
クジラ、九州は餃子巻き、沖縄では豚足などなど・・・。
全国区のおでん、ご当地のおでん種を食べ歩くのも楽しそうです。

さて、赤羽の丸健水産には独特のおでん作法があります。
まず店頭に立ち、椅子が空いているからと勝手に座ることは許されません。
店主が椅子を指さし、そこがゲスト専用?の居場所になります。
また、代表幹事一人が並んで人数分の席とりも禁止、ほろ酔いでの入店も禁止、
ルールのさじ加減はお店の方の権限、厳しくチェックされますのでご注意を。
おでん屋ですから食べることがメイン、呑む方はカップ酒一本が原則。
カップ酒が半分になったところで店員さんに差し出すと、おでん汁が注がれます。
丸健水産の看板メニュー?「だし割」、お酒好きにはたまらないドリンクだとか。

仕事帰りに仲間とおでんで一杯、飲みニケーションも大切な時間ですが、
ご家庭で、おでん鍋を囲んで過ごす団らんのひと時も、潤いの溢れる光景です。
お鍋を中心に家族や仲間が気ままに過ごす、
実は「お鍋を中心に」が大事なキーワードなのです。
中心に置かれた鍋はたった一つ、中にはたくさんの具がぐつぐつと煮えています。
自分の食べたい具を銘々の皿にとり口にする、交わす会話を肴にお腹が満たされて
いきます。家族のみなさんやお仲間の視線が、真ん中に置かれた鍋に寄せられる、
すべてが自分のものではないという自覚、みんなで分け合うんだという意識が
無言のうちに生まれ、仲間意識となるのです。

これって多分人間だからできることなのではないでしょうか。
他の動物では、それぞれ分けられた皿に個別に盛られていなければ
強者が独り占め、他の誰かが皿に顔を突っ込もうものなら「グゥガァァァーー」
バトルは必至です。食べものの恨みは命がけ?

おでんのみならず、鍋を囲みながら語らい笑えば、家族や仲間の絆も深まります。
この冬は、たくさんの人たちと鍋を囲んで、コロナで閉ざされた窮屈な日常から
解放されるひとときを、お楽しみになってはいかがでしょうか。
リモートでは感じ取れない細かな表情や身振りといった非言語情報から
生まれる仲間意識は、まさに集団の活力の原点です。

コロナもインフルも収まらぬ中、密だらけとやり玉に挙げられそうですが
「おでん交流」、日本の伝統スタイルをないがしろにはできない季節です。

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J's B-press VOL.127(2023.10.31)

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コラム『明鏡止水』 ~ アーバンベア騒動 ~

ディズニーの人気キャラクター、赤いシャツを着たハチミツ好きのくまのプーさん、
黄色のぬいぐるみは子供たちに大人気です。
街で見かける女子高生のバックパックにも、よくプーさんが揺れています。
かわいらしい動物キャラクターのモチーフとなる「くま」、
ひらがなで書くと、確かに人間のお友だちの雰囲気ですが、
「熊」と漢字で書くと少し雰囲気が変わります。

青梅、八王子、奥多摩、東京近郊でもヒグマの目撃情報が
頻繁に報道されるようになりました。
都会に出没するから「アーバンベア」? なにも新種ではありません。
また、都会派だから洗練されていて人に懐つき、コミュニケーション能力に
長けている・・・なんていうこともありません。本質は獰猛そのものの猛獣です。
野生の熊は、プーさんのように笑いを提供してはくれません。
今年は、北海道や東北地方で山菜採りに入った方が、
ヒグマやツキノワグマに襲われ、命を落としたという報道をよく耳にします。
本来、熊は臆病な動物で、人を襲うことはあまりなかったはずなのに、
人里に近づき食べものを漁り、時に人を襲う行動は
異常気象による山の食糧難に原因があります。
年々激しくなる地球の高温化、
エサの枯渇は、日本の熊のみならず生態系に大きな影響を与えているようです。

特に今年は、ハワイの旧首都ラハイナが全滅したマウイ島の山火事、
たくさんのコアラが焼け死んだオーストラリアの山火事、
フロリダの巨大ハリケーンと高潮など、気候変動による災害がとどまるところを
知らず、破壊されていく地球は人類に深刻な問題を投げかけています。

さて、話を戻して日本の熊の話です。
北海道や東北の寒冷地に居を構えているはずの熊、東京近郊や伊豆半島まで
一体どうやって来たのでしょうか。まさか新幹線、チャリで来るはずもなく…。
好天の休日、仲間や家族とハイキング、ピクニック、川辺でBBQ・・・
そこで運よく、いや運悪く、熊と出遭ったらどうすればよいのか、
環境庁から対処の方法が公表されていますので、以下抜粋します。

近くにクマがいることに気がついたとき
・落ち着いてゆっくりとその場から離れましょう。
・クマを驚かすので、大声を出したり、走って逃げるのはやめましょう。
クマに背を向けずに、クマを見ながら、ゆっくり落ち着いて後退してください。
すぐ近くで出遭ってしまったとき
・慌てた人の急な動作に驚いて、攻撃してくることがあるので、
冷静に、慌てず、 クマが立ち去ってからその場を離れましょう。
・突発的に襲われたら、両腕で顔や頭をガードして、大ケガを避けましょう。

(環境省「クマ類の出没対応マニュアル 改定版」より)

クマは、巨大な手とツメで殴りかかってくるようです。
落ち着いてゆっくり後ずさり・・・できそうもないことばかり、
顔と頭をガードして、お腹や手足はかじられてもガマンする、そりゃ~ムリだっ!
ホントにクマと出遭った方が書いたものでしょうか???

出会い系でアーバンベア?
頼むから近隣に出没しないでください、クマ様。

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J's B-press VOL.126(2023.09.29)

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コラム『明鏡止水』 ~ コロナの猛威 ~

「しばらく顔見なかったよね」「コロナに罹っちゃいましてね~」
「あれっ?前にもコロナに罹ったんじゃない?」
「ワクチン5回打ったんですが、二度目のコロナなんですよ~。
今回は軽く済みました。ワクチンのお陰ですかねぇ~」
知り合いの彼、こんな言葉をやり取りしながら後ずさり、
思わず飛沫感染を警戒しちゃいました。
登別のクマ園でエサをねだるクマのような巨躯、
とてもコロナに屈するような体型じゃないのに???

インフルエンザ並みの対応に格下げされたとはいえ、相変わらずの猛威、
コロナ罹患数は一向に減る雰囲気がありません。
確かに、志村けんさんや岡江久美子さんが亡くなったときのような衝撃は
薄らいだものの、人ごみの中では今もマスク・手洗いが必要な気がします。
ワクチンにしても、まあ軽症効果は感じられますが、劇的にコロナウイルスを
退治したとは思えません。ウイルスもワクチンに負けぬよう(?)変幻自在、
まるで忍者のように姿かたちを変えています。
9/20からは、新系統「XBB.1.5」に対応したワクチンの接種が始まっていますが、
従来株や変異株オミクロン株に対応したファイザー製とモデルナ製のワクチンは
効果なしということで、合計8,630万回分を順次廃棄すると発表した厚労省、
思わず「いくら分なの?」と聞きたくなりますよね。
高額なワクチンの廃棄、その元は税金、増税が生活コストに重くのしかかります。

また、ワクチンの効果については未だ議論百出、忠実に新種対応ワクチンを
6回も7回も打ち続けた方もいらっしゃれば、一度も打ったことありませんよと
しらっとのたまうお医者さまもいらっしゃいます。
そのお医者さま、ご自身は効果を信じていないワクチンを、
希望者からの予約は受けつけ、接種でかなり稼いでいるとかいないとか。
なんとも、世の中の矛盾がすべて凝縮されていますね。

感染増加が心配される中、前述のワクチン「秋接種」が始まります。
費用は無料で、生後6カ月以上の全ての人が対象です。
接種するかどうか、街の人たちのご意見です。
80代女性:「副反応がすごかった。やらないと不安、やっても不安。
だから考えちゃいます」
40代男性:「周囲でも少し増えてきているので打ちます。マスクもつけています」
40代飲食店経営男性:「打ちます。万が一かかったときに周りに迷惑を
かけたくないから」
50代知り合いの医者:「打ちませんよ、意味ないんだから」

根強いコロナ、「武漢のこうもり発」説もいつしか薄らいでしまいましたが、
まだまだ人間とのバトルは続いています。
罹患時の症状は軽くなったというものの、感染力は一向に衰えていません。
マスク不要のスーパー・ドラッグストア・居酒屋・カラオケ・呑み会・交通機関、
まだまだ危うい気がします。
職場内においても手洗い・うがいは必須、自衛の秋です。。

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J's B-press VOL.125(2023.08.31)

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コラム『明鏡止水』 ~ サンマの暴騰 ~

早々に魚市場でサンマの初競りニュース、
猛烈な残暑続きですが、秋はすぐそこまでやってきています。
さて、8/21に行われたサンマの初競り、1キロあたり最高23万円の値がついて、
昨年の約4倍、1匹あたりに換算するとなんと28,000円!
サンマ1匹買うのに3万円出してお釣りが少々?
平成の記憶では1匹100円程度(?)だったのに・・・。
「令和のサンマ」さて、どんな方の口に入るのでしょうか?

サンマを漢字で書くと「秋刀魚」、旬の季節が「秋」で、
銀色に輝く細身の姿が「刀」を連想させるということから
「秋刀魚」になったそうです。
日本の秋の味覚の代表格、ちょっと焦げ目のついた焼きたてに柚子を搾り、
大根おろしに醤油をたらし、ほぐした身にのせて舌に・・・!
冷たいビールとのコンビは、最高の夕餉ですよね。
そんな庶民の味・サンマも、近年は漁獲量が減少し、価格が高騰しています。
気候変動の影響といわれますが、不漁の原因は別のところにもあるようです。
サンマは北の海で、今も元気に大きく育っています。
ところが、育ったサンマが潮流に乗って日本近海にやってくる前に、
外国の大型漁船が乱獲してしまうのが、ホントの原因といわれています。
大きく太ったサンマは大型漁船に捕獲され、
日本近海に泳いでくるのは細く小さなものばかりというわけです。
魚食のおいしさが世界的に知られ、過度な漁獲競争を招いているのでしょう。
水産資源の持続的確保のため、国際的な漁業交渉も行われていますが、
それぞれの国の思惑があり、難航しています。
このままでは、サンマは庶民の手に(口に?)入らなくなるかもしれません。

かつて、サンマの水揚げ全国1位を記録したことがある千葉県の銚子漁港、
2022年の水揚げは、1950年以降で初めて「ゼロ」となりました。
サンマに慣れ親しんでいる私たちの味覚、代わりになる魚は思いつきませんが
イワシやアジといった比較的安価な魚に目を向けることも
サンマの需要を減らす一策です。
海洋国日本、食卓を彩る海の幸はサンマ以外にも豊富にありますから。

魚談義のついでに、よく話題になる魚の食べ方についても一言。
焼き魚でも煮魚でも、食後はネコも跨ぐほどきれいに食べてほしいものです。
飢餓と戦うアフリカの子供たち、フードロスが問題になっている最近の日本、
おなか一杯が当たり前になっている私たちの食生活を、
改めて見直すことが大切ですね。

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J's B-press VOL.124(2023.07.31)

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コラム『明鏡止水』 ~ ジャパン・アズ・ナンバーワン ~

ちょっと古い話ですが、1955年頃~1973年頃までを高度経済成長期といいます。
私たちの父母や祖父母は、終戦後の焼け野原から日本経済の立て直しにひたすら
励み、年平均10%以上の経済成長を達成して、今の日本の基盤を築いたのです。
経済成長を支えたのは、教育水準が高く安い労働力、確かな技術力、
堅調な輸出、旺盛な消費意欲、護送船団方式といわれた政府の強力な後押しと
企業の協業体制でした。
1964年の東京オリンピック開催をきっかけに、
新幹線が走り、東京タワーが建ち、高速道路が整備され、
家庭にはテレビなどの家電が急速に普及した時代でもありました。

この驚異的な高度成長を、1979年にアメリカの社会学者エズラ・ヴォーゲルが
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という一冊の本にまとめ上げました。
彼は、日本の高度成長の基盤になったのは、世界でも珍しい識字率の高さと
読書習慣を持つ日本人の学習に対する貪欲さである、と説いています。
本書によれば、当時の日本人の学力は、数学では世界第2位、
国語や科学などでも極めて高い水準をもつ、賢い国民といわれていました。
また、学歴としては小学校卒だった総理大臣・田中角栄氏に示されるように、
学んで賢者となった者なら、誰もが社会でリーダーシップをとるチャンスがある、
いわゆる階級社会ではない柔軟さこそが、日本の強さだと分析しています。
しかし、こうした評価の一方で、彼は「世にも稀な高度成長は終わり、
日本は必ず没落する」とも予言しているのです。
その理由は実に簡単なものでした。
戦時中の窮屈な社会から解放され、自由奔放に生きることを許された人々は
活力に満ち溢れていました。その活力こそ、高度成長の大きな要因なのに、
なぜかその後に導入された「偏差値教育」、これが社会の柔軟性を失わせ、
活力をも奪うと気付いていない、それが没落予言の理由だというのです。

現代の子供たちも、
偏差値をおでこに貼って窮屈に生きることを強いられています。
偏差値主義・学歴偏重の世の中が子供たちの進路を制限し、エリート社会を生み、
富裕層の子供だけにチャンスがあるような階級社会へと変遷していくことに、
さほど時間はかかりませんでした。
AI、DX、GX、EV・・・未来の世の中を創る様々な分野で
日本は明らかに遅れてきているという報道が、このところ目につきますが、
もう50年も前から、現代の日本社会への警鐘が鳴らされていたことに
些か驚異を覚えます。

何を基準に学力の低下を指摘しているのか、正確なところは判りませんが、
学習到達度調査をはじめいずれの調査でも、この10~20年、
小中高校の国語、数学、その他の分野で、日本の平均的学力は下降の一途、
過去最低水準となっています。
ゆとり教育の失敗だとか何とか、原因をとやかく言ってる場合じゃありません。
膨大な情報を確実に整理しながら、活用して生きていくためには
今までの数十倍、いや数万倍の学習が必要な時代なのに。

SNSの世の中、学習方法なんていくらでもあります。
私たちの親の世代は、汗まみれで働きながら手探りで学んでいましたよ。
はっと気がついたら、後進の人たちに、AIロボットに追い越されていました、
なんて・・・。まぁ、ゆとりと怠惰は似てますけれど…。
勤勉に積み重ねる学習の大切さを、もう一度思い出すときのような気がします。
そうそう、Chat GPTに「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と入力したら
この語句は登録なし、とはじき返されました。
近年の用語じゃないとダメなんですかね~。

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J's B-press VOL.123(2023.06.30)

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コラム『明鏡止水』 〜 消費は楽しいけれど 〜
リンガーハットはメニューの半数を値上げ、マックも今年2度目の値上げ・・・

おいしいものを、食べたいときにお腹いっぱい食べられるって、
誰もがハッピーな気持ちになりますよね。

でも急激な円安、あらゆるモノの値上がりは生活を脅かしますから、
そう簡単に財布のひもを緩めるわけにはいきません。
消費は計画的に。買わない、売れない、街にはそんな雰囲気が漂うこの頃です。
とはいうものの、どうしても必要なものは高くても買わなければなりません。
消費者庁の「消費者白書」「消費者意識基本調査」によれば、
「携帯電話やスマホは、自分の生活になくてはならない消費である」
と考えている人たちが、30歳以下の若い世代では80%以上を占めます。
高齢層を含めた全体でも65%ですから、生活コストが幅広く上昇するなか、
私たちの懐に一番大きな負担になっているのは、スマホ代なのかもしれません。

また「お金をかけていること」で一番多いのが「食べること」、
これは、若者のみならず全年齢層共通の傾向です。
次いで「ファッション」や「美容・ 身だしなみ」といった外見に対する費用や、
「スポーツ観戦・映画・コンサート鑑賞」が続きます。

また「貯金」と回答した割合が、意外と多いことも注目に値します。
将来への生活の不安を抱える人たちが多いという裏付けなのでしょう。
もちろん節約は大事、浪費は慎まなければなりませんが、
大量生産・消費大国ニッポンにどっぷりつかった私たちは、
ちょっと贅沢をすれば、欲しいものはなんでも手に入ることを知っています。
消費で豊かさに囲まれた生活って魅力的ですからね〜。 

でもちょっと待ってください。
楽しい消費の陰に、思いがけない落とし穴が隠れていることがあります。
消費者庁の「消費者ホットライン」に寄せられたいくつかのトラブル例を  抜粋しますから、ご自身やご家族の安全の道標にしていただきたいと思います。
「娘が10円のダイエットサプリを注文、2回目が届いて、初めて定期購入だとわかった。解約したいと業者にメールを送っているが、返事がない」
「ネット通販で化粧品を買ったが、実は4回購入が条件の定期購入だった。
業者に連絡したら、4回購入した後でないと解約できないと言われた」
「息子が無料アダルトサイトの再生ボタンをクリック、慌ててサイト事業者に連絡したら、退会するには20万円が必要だと言われた」
「スマホゲームの課金アイテムや有料ガチャで、高額な請求を受けた」
「海外のECサイトとの取引で、偽造品・発送キャンセル・業者雲隠れ・・・」
「正規サイトと酷似した偽画面にカード情報を入力してしまい、詐欺に遭った」
「高齢者をターゲットにした霊感商法や不当寄附、偽健康器具、悪質サプリ」
「当選通知のDMから偽サイトに誘導され、個人情報を詐取・悪用された」
これらはほんの一例です。
詳細は消費者センターのホームページをご覧いただきたいと思います。
法的拘束力のない「約束」なのに、あたかも「契約」しているかの如く
高圧的にふるまう悪徳業者も多いと聞きます。
安心して豊かな消費生活を送るために、「賢い」消費者でなくてはなりません。

※消費トラブルで困ったら、一人で悩まずに相談してください。
消費者ホットライン:188
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/damage/

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J's B-press VOL.122(2023.05.31)

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コラム『明鏡止水』 〜 あれっ、日常って? 〜
思い起こせば2020年1月、国内で初めて新型コロナの感染が確認されました。
同年4月には7都道府県に緊急事態宣言が発令され、
感染 →隔離入院 →死と隣り合わせ、戦々恐々おっかなびっくりの日々でした。
あれから3年、今年になってマスク着用は各自の判断に委ねられ、
5月には、感染法上の分類が、重症化リスクや感染力が高い「2類相当」から、
季節性インフルエンザと同等の「5類」に引き下げられました。
感染対策も、基本は「個人の判断」、マスクは「着用が効果的な場面では推奨」
となりました。
「効果的な場面」には、通勤ラッシュ時など混雑した電車・バスに乗るときや、
医療機関・高齢者施設などに行くときが例示されています。
一概には言えませんが、やはりこのような場合には、
今まで通りマスクは必要な気がします。

約3年間、行動を制限され苦しめられた私たちの日常生活、
さて、コロナ以前はどんな日常であったのか、なかなか思い出せません。
職場や学校、観光地やショッピングモールにも、人の流れが戻ってきているのは
確かなことですが、コロナ以前とは些か様子が違うようです。
私たちは、コロナ禍の3年間でかなりの学習をしました。
例えば、三密の回避、換気、手洗い・うがい、マスクの着用、
ソーシャルディスタンスなど、公衆衛生への関心度は大いに高まりました。
また、わざわざ時間をかけて移動せず、リモートで用件を済ませる方法も
日常の中に組み込まれるようになりました。
アウトドアの楽しみや、おうち時間の大切さを感じた方も多いことでしょう。

「戻る日常」「平時へ第一歩」「日常を取り戻せ」・・・5類移行の初日の報道には
こんな表現の乱舞、待ち焦がれていたことがよくわかります。
でも、コロナ以前の日常、
取り戻すべきものと、取り戻してはいけないものがあるはずです。
2類から5類に法律上の位置づけが引き下げられても、コロナウイルスそのものが
なくなった訳ではありません。感染力の強いウイルスは身の回りに溢れています。
「もう警戒しなくて大丈夫」それは大きな間違いです。

考えてみると、不特定多数が触れるものは世の中にたくさんあります。
例えば、女性はマスクを外すとお化粧を復活させる必要がありますよね?
トイレの中で、化粧道具を誰もが使う棚に置いたり、水道の栓をプッシュしたり
ひねったり。その手で目元や口元を触れば、感染機会は多くなります。
ウォシュレットの操作パネル、ドアの開閉ノブ、紙幣やコインの受け渡し、
クレジットカード決済で暗証番号を入力するGキャット、
エレベーターのボタン、飲み物のベンディングマシーン・・・気になることだらけ。
また、自分の体調が悪い時の、周囲への配慮も大切です。
昔のように、マスクもせずに「他人にうつせば治る!」なんて、言語道断です。

新たな日常、それぞれがしっかり身構え、
慎重な一歩を踏み出していただきたいと思います。

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J's B-press VOL.121(2023.04.28)

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コラム『明鏡止水』 〜 漢字を書けなくなった 〜
文化庁国語科の「令和3年度国語に関する世論調査」のなかで、
スマホ、パソコンといった情報機器の普及が、
私たちの「言葉」にどのような影響を与えると思うか、と尋ねたところ、
最も多かった回答は「手で字を書くことが減る」で89.4%、
次いで「漢字を手で正確に書く力が衰える」89.0%、となったそうです。
新聞・雑誌の記事はすらすら読めるけど、いざ自分の手で書くとなると
「あれっ?どんな字だっけ?」…皆さんにも、そんな経験がありませんか?
漢字を正確に書けなくなった原因が、変換キー頼りの日常にあるのは
確かなようで、「手で字を書くのが面倒と感じるようになった」
「自筆の手紙やはがきをあまり利用しなくなった」という声も増えています。
文字を手書きする機会は、今後もさらに減少していくと思われます。

しかし、「書く」ということの重要性は、昔も今も変わりません。
何か文章を作ろうとするとき、いろいろ考えますよね。
まず「何を書くか」「何を伝えたいのか」「どんな書き出しで、
何をどんな順番で書くか」「短文でも起承転結はしっかりと」
また、漢字とひらがなとカタカナ、外来語と和語などの使い分けにも
神経を遣うはずで、これらの作業はすべて脳の活性化につながっています。
さらに手書きであれば、「鉛筆で書くのか、ボールペン、筆で書くか」
文字の「大きさ」「太さ」「行間」「配置」などなど、
考えなくてはならない事柄がたくさんあります。
「手書き」の効能として、キーボード入力に比べて記憶力が高まる、
という調査結果が、多くの大学や研究機関から発表されています。
その昔、学生時代の試験勉強で、読むだけでなく「書く」ことによって
憶えていった経験をお持ちの方も、かなりいらっしゃるのではないでしょうか。
これは、「書いてまとめる」「自分のなかで整理する」という一連の作業が、
記憶の定着に大きく影響するからなのです。

私事ですが、知人との連絡はSMSに寄りかかることが圧倒的になったこの頃、
依頼状や礼状を自筆で認める(したためる)機会は激減しました。
たまに改まって書くことを迫られるはがき、
先だっても「該当なし」の「ガイ」、あれっ?どんな字だったっけ?
印相違の「イ」の字、あれっ「異質の異」?
来週お邪魔したいという意味の「おたずね」は「訪」?「尋」?
ご意見をお聞かせいただきたいの「きく」は「聞く」「訊く」「聴く」?
変換キーが候補を挙げてくれても、どの漢字を選択すればいいのか
迷うのはいつものこと、候補なしにペンで書けと言われたらまずムリ。

デジタル機器を利用した新しい「勉強」の仕方も、
年々、開発・導入が進んでいます。
その利便性・実効性は理解できますが、便利さの一方に潜む危険も、
しっかり見きわめる必要がありそうです。
デジタルでいつでも手軽に知識が得られるなら、深く理解する必要はなく、
「考える」ということの質までも、変わってしまうのでしょうか?
少なくとも、「漢字かけない病」に罹ってしまうのは事実です。
奈良・平安時代から続く書道、手書きの文字の美しさは、
伝統文化として大切にしなければいけません。
急速にデジタル色に染まる風潮のいまですが、
伝統文化の消滅に歯止めをかけることも重要です。

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J's B-press VOL.120(2023.03.31)

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コラム『明鏡止水』 〜 WBC世界一 〜
3月の話題は何といっても、最強といわれるアメリカを倒し世界一になった
WBC・侍J(さむらいジャパン)の大健闘でしょう。
普段、野球にあまり興味のない方たちの話題にも上る盛り上がりを見せ、
準々決勝のイタリア戦は、WBC中継史上最高の視聴率48%を記録しました。
また、準決勝のメキシコ戦、平日朝の放映となった決勝のアメリカ戦は
ともに42%台の高視聴率、各局のニュース番組やワイドショーも、
WBCの話題で溢れかえりました。(ビデオリサーチ関東地区調査)
またSNSによる「WBC、あなたの満足度は?」という調査では、
18万票を超える投票者のうち、フルマークの「100点」と回答した人が97%、
ほぼ全員が日本のチームの激闘に感動を覚え、満足したという
圧倒的な結果が出ています。

これほどまでに、WBCが国民の関心を集めたのは何故なのでしょう?
きっと、出場したプロ野球界の超一流プレーヤーたちの「本気度」、
世界一を目指して一丸となり、闘志をむき出しにしている本気の姿が
見ている人たちに熱く伝わったからなのだと思います。
投球・打撃・守備・走塁、すべてのプレーに自分の全能力を発揮しようとする
真剣さが、あの奇跡的な逆転劇を、紙一重の勝利をもたらしたのでしょう。

メディアに載ったコメントを、いくつか並べてみます。
MVPに輝いた大谷翔平選手と二人三脚で彼の通訳を努める水原一平さん
「翔平があんなに楽しく野球をやっているのを初めて見た」
巨人の岡本和真選手「ゲームセットになった瞬間、野球ってこんなに
楽しかったんだなと思いました。めちゃ嬉しかったです」
メキシコ戦で劇的なサヨナラ逆転打を放ったヤクルト・村上宗隆選手は
「走塁で汚れたユニフォームのままマウンドに向かう大谷選手の姿、
夢のようなシーンでした」
最年長としてチームを一つにまとめ上げたダルビッシュ選手、そしてもちろん
栗山監督の人柄と熱意、どれ一つ欠けても世界一は達成できなかったと思います。

超一流のプレーヤーたちの本気と本気のぶつかりあい、ガチンコの戦いは
野球の本当の醍醐味と興奮を、私たちに届けてくれました。
平穏であるがゆえに、時に緊張感を忘れる日々を過ごしている私たち、
親に友に仕事に子育てにそして学びに、「本気」で取り組めば楽しく、面白い、
それに気づかせてくれるWBCでした。

後藤静香(ごとう せいこう)さんの「本気」の詩を抜粋して、
今月号のエピローグにします。
本気ですれば たいていな事はできる
本気ですれば なんでも面白い
本気でしていると だれかが助けてくれる
人間を幸福にするために 本気で働いているものは
みんな幸福で みんな偉い

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J's B-press VOL.119(2023.02.28)

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コラム『明鏡止水』 〜 閉 店 〜
荒川区東日暮里4丁目の○○パン店、
卯年明けからシャッターは下りたまま、
「75年間、ほんとうにほんとうに、ありがとうございました 店主」
北風に貼り紙が寒そうでした。

残念ながらもう届かないファンの書き込み、「おすすめは、
トロ玉子カレーです。カレーパンの中に半熟のゆで卵が入っていました。
スパイシーなカレーにトロトロの玉子、そしてカリッとしたパン。
お洒落なパンというよりは、昔ながらのパンが売られています。
購入された方限定なのかわかりませんが、パンの耳を無料でくれました。
でも「現金利用のみ」なので注意です」

数年前お店の真ん前に、一昨年には50mくらいの並びに、それぞれ
大型スーパーがオープン、客足が流れ売上に大きな打撃があったようです。
書き込みにもあるように昔ながらのパン工房、焼き立ての味と香り、
昔懐かしい味を求めるファンも多かったのでしょうが
「現金のみ」の商売は、今流ではなかったのかもしれません。
ご近所に大きく構えたキャッシュレスのスーパー、
釣銭不要のクレカやスマホ決済、多彩なキックバックポイント・・・。
主婦層のお買い物は大型スーパーに流れてしまいます。
カード不可「現金のみ」のパン屋さん、
カード運営会社への支払手数料負担にも、抵抗があったのでしょう。

また、パンの原材料、小麦、砂糖、バター、卵といろいろありますが、
いずれも暴騰、小麦はここ数年で50%上昇、卵に至っては一年で一気に倍以上。
電気もガスも、小売価格を倍に上げたとしても追いつかないほどのインフレです。
工房の職人さん、フロアやレジの店員さん、正規非正規を問わず
人件費はみんな上がります。
収益を削り、赤字を覚悟で、きっと頑張ってきたのでしょう。
悩んで悩んで「ほんとうにありがとう」の貼り紙になったことは
想像に難くありません。
ベーカリーでもブランジェリーでもなく○○パン店、「パン店」ですよ。
戦後の灯がまた一つ消えていきました。

「継続は力なり」 とある宗教家の言葉です。
続けるということ自体、苦労を伴うものです。
戦後間もなくから75年間、波乱混乱の世の中に挑戦し続けながら
よく頑張ってこられたと頭が下がります。
デジタル化の流れ、急激なインフレ、
やむを得ず継続を断念することになりましたが、
「ほんとうにありがとう」の言葉には、悔いは残っていないような響きがあります。

コロナ禍が少しずつ収まってきました。信用金庫が心から応援し続けたい
町の小さなパン屋さん、手作り焼き立て、いつか復活してくれるといいですね。

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J's B-press VOL.118(2023.01.31)

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コラム『明鏡止水』 〜急増するネット犯罪にご用心〜
コロナ禍が収束したわけでもないのに、「5類」への引き下げ、
イベント収容規制の解除など、経済活動の再開を急がせる政策が
次々と示されていますが、急激なインフレや巣ごもり需要の減退から、
景気は間違いなく負の方向へ進んでいるように思えます。

一足先に海外では、AmazonやGoogle、Microsoftなど、これまで世界を
牽引してきた大手企業が、1万人規模の大幅な人員削減を発表しています。
既存社員の削減に止まらず、今後数ヵ月かけて新規の採用も抑制するようです。
アメリカはそうした制度・風土の国なのだ、と言えばそれまでですが、
一般的に、失業者が長期にわたって増え続けると、世相が殺伐として
犯罪率が増加、自殺者も増えてさらに世の中が暗くなる・・・
という悪循環を招くことは、歴史が明確に証明しています。

もちろん、世界的な不況は日本社会にも大きな影響を及ぼします。
コロナ禍を必死で凌いだのに、物価高騰の追い討ちを受けて
閉鎖・廃業に追い込まれる町場の企業も目にします。
我が家から歩いて数分、便利にしていたお店が先週閉店しました。
顔なじみの店員さん「なにか仕事ありませんかね~?」悲しそうな表情でした。
どんな小さな商店であっても、
閉鎖すればパート従業員を含め、何人かは仕事と収入を失います。
企業防衛は確かに大切ですが、雇用機会を維持し続けることは
もっと大切なことのはずです。残念ながら力尽きたの感がありました。

そんな世相を反映してでしょうか、姿を見せぬネット犯罪も急増しています。
スマホを開くと、つい覗いてみたくなるような言葉が並びます。
最安値、絶対儲かる、日本一売れた、利用者満足度二冠、三冠・・・
ちょっと見には魅力的に映りますが、一歩引いて深呼吸をしてみませんか?
こんな類いの誘惑の中には、クレジット決済で購入したにもかかわらず、
待てど暮らせど送られてこない、なんてトラブルも後を絶ちません。
体のいい詐欺です。気づいた時にはサイトは閉鎖され、
消費者センターに駆け込んでも、返金されるケースは万に一つとか。
また、個人間融資やひととき融資などといった反社経営の金融犯罪、
被害者の40%がヤミ金の新たな手口とは気づかなかった、というほど
巧妙な犯罪です。気づいた時には手遅れの恐ろしい罠、
ご自身も、お子さまやお年寄りもどうぞご用心下さい。

繰り返しになりますが、景気の先行きが不透明な時代には
新手の詐欺や極悪な犯罪が急増します。
非対面で利用できる便利なSNSの世界、犯人側も姿を見せませんから
事件が起きれば簡単には解決できません。
SNSが日常の私たちの生活、距離感を時々リセットしながら
慎重に利用されることをお勧めします。

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J's B-press VOL.117(2022.12.30)

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5Gの時代の「時は金なり」

相変わらずコロナに閉じこめられた2022年でしたが、
そろそろ収束して欲しいものです。行動制限は緩和されたものの、
ウイルスが消えたわけではありませんので、三密回避、マスクの着用、
うがい手洗いの励行、感染予防の気を引き締めて年末年始をお過ごしください。

変化の激しい時代、技術進歩の速さを指して「マウスイヤー」などと
言ったりします。ネズミの成長速度は人間の18倍、IT技術はそれくらい
めっちゃ速いスピードで進歩していますよ、という意味ですね。
また、通信の世界で速さといえば5G、4Gの20倍といわれる
高速大容量の通信規格です。ネットワークが広がっていけば、将来的には
車の自動運転や遠隔診療が容易になり、都市部と地方の格差解消や、
災害時のドローン活用など、便利で安心安全な社会生活が期待されています。

一方、技術進歩によって、社会における「時の流れ」もスピードアップし
同じ1時間でも、処理できる仕事量は昔より格段に増えています。
また、GPSのおかげでドライブや探し物は便利になりましたが、
使い方によっては、どこで何しているか、逐次追いかけられてしまいます。
移動しながら直接おしゃべりをしている光景も、当たり前になりました。
固定電話の時代は信金にも交換手さんがいて、取り次いでくれた時に
「出掛けてることにしてよーっ!」なーんて逃げたのも懐かしい思い出です。
より速く、より多く、より効率的に・・・私たちが毎日、慌ただしく
追いかけられている「時」、いつの頃からできたのでしょうか?

時計も暦も存在しなかった時代、大昔の人たちは、
朝がきて明るくなって暗い夜がきて、また朝がきて夜になって、
そんな繰り返しのあることに気付きました。
さらに、雪が降り凍えるような季節から、徐々に寒さがほどけて
うららかな季節を迎え、やがて太陽の照りつける暑い季節が
必ずやってくることも知るようになりました。
気候に周期性があることを学ぶと、自分たちが生きるために必要な食糧の
育成・栽培の手順が、気候と密接に関係することもわかってきます。
気候の周期性と、月や星、太陽の動きといった現代で言う天文学との関係性を
自然の中から感覚で学び取り、「時」という概念が作られていったのです。
もちろん、1年が12か月、1日が24時間という今の形になるには
何百年という歳月を要したわけですが、1日の長さ自体は
今も昔もまったく変わらないというのは、何とも不思議な話です。

江戸時代の日本では、1日を夜明けと日暮れで昼夜に分け、それぞれを
6等分して、その一つの長さを一刻(いっとき)と呼んでいました。
当然、一刻の長さは季節によって変わりますし、一般庶民の家には
時計なんてありませんから、「寺の鐘」や「城の鐘」でなんとなく
朧げに知るのが時間。だからといって、特段不便はなかったようです。
鶏の鳴き声で夜が明けて、カラスが鳴いたらそろそろ日暮れ、
秒針に追われる現代の私たちが忘れかけた景色ですね。

そして今、1時間でできる作業量が何十倍、何百倍、何万倍と拡大しても、
文明や技術がどれだけ進歩し、物理的な距離を超えられるようになっても、
時が「有限」であることだけは、変わりありません。
今この瞬間は二度と戻らず、「時」は直ぐにとろけて無くなっちゃうんです。
限られた時間を迎え撃ち、何を想い何を為すか。
流れの速さに惑わされず、時を無駄遣いしないようにしたいものです。

暮れの配信ですので、改めてご挨拶を申し上げます。
「一年間ご支援ありがとうございました。どうぞよいお年をお迎えください」

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J's B-press VOL.116(2022.11.30)

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コラム『明鏡止水』 ~ファーストペンギン~

「金なし」「家なし」「仕事なし」のシングルマザーのサクセスストーリー
「ファーストペンギン」がTV放映されています。
市場で売れば二束三文にしかならない魚介を、船上ですぐに活締めをして
「鮮魚ボックス」に詰め、市場を通さずに、料理屋など都会の実需者に直送する
というビジネスモデルを発案し、漁協などの強力な反対にも屈せず事業化した…
という実話をもとにしたドラマです。
主人公のモデルは坪内知佳さん、
元は中小企業にDXを指導するコンサルタント、御年36歳の女性です。
アジとサバの区別すらできなかった坪内さん、
ひょんなことから、山口県萩市の萩大島船団丸の代表に就くことになります。
社員は漁師60人、荒れ狂う海で漁を生業とする荒くれ男の集まりです。
そんな荒くれ男たちをどう取りまとめ、事業として成功に導いていったかは
ドラマをご覧になっていただくとして、会社経営がうまくいく秘訣、
坪内さん流経営術の一端をご紹介させていただきます。

AI・DX・ICT時代であっても組織の基本にあるもの、それは「人」です。
組織は決して一過性であってはいけません。なぜなら、その組織には
直接・間接に関わるたくさんの人たちが存在し、その人たちの未来に
持続的な幸せを保証しなければならないという責任があるからです。
それが「組織は永遠(going concern)」といわれる所以です。

組織として新しい仕組みづくりをするときにも、関係するたくさんの人たちと
時間をかけて丁寧に対話することが重要です。
スピード優先の現代では、時間と労力のかかることは敬遠されがちですが
関係する人たちが同じ目標に向かって走り続けるためには、
衝突を恐れずに納得するまでよく話し合うこと、これだけは省略できない、
最も大切なプロセスだということを忘れてはいけません。
相手の考え、その胸の内を、黙って感じ取るにはおのずと限界があります。
会話をしながら相手の真意を引き出し、納得のいく合意に導くこと、
これって、人間以外の動物にはできないことなのです。
経営者と漁船員、生産会社と取引先、上司と部下、男でも女でも、
老いも若きも、親子の仲でも、すべてに共通して言えることです。
理屈でぶつかり、面倒になって「こっちを向けっ!」とつい拳固を振りかざす、
反論・異論に耳を傾けず、顔を背けて口もきかなくなる・・・
よくあるパターンですが、
人間だけが持つ能力を放棄してしまうなんて、実に愚かなことです。
「ダンナと(カミさんと)一週間口きいてないや」
なーんて、言ったことありませんか?

高速大容量の5Gが普及すれば、ネットワーク経由の会話はさらに加速し、
アバターもロボットも進化して人間そっくりになるかもしれませんが、
目を見て、時間をかけて、心の奥底からの本音トークは、人の社会に不可欠なもの。
企業だって家庭だって、組織の最小構成単位は人でしょ?
本音トーク抜きでは持続可能性は失われ、明るい未来はありません。
リアルな会話がもたらす意味・価値は、永久に不変なのです。

ところで、ペンギンの群れにはリーダーがいないのだそうです。
誰に指示されたわけでもなく、天敵がいるかもしれない海へ
魚を求めて飛び込む最初の1羽、それが「ファーストペンギン」。
その「勇敢なペンギン」のように、
リスクを恐れず新しいことに挑戦するベンチャー精神の持ち主を、
米国では敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼びます。
素人だからこその発想で既成概念を打ち崩した坪内さん、
まさにファーストペンギンそのものです。

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J's B-press VOL.115(2022.10.31)

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コラム『明鏡止水』 ~ハロウィン~

今朝の新聞に、スーパーIYの折り込み広告が入っていました。
『めちゃハピ・ハロウィン』、目をひくキャッチコピーですね。
中が真っ黒びっくりオムライス(魔女の黒コスチュームをパクったもの?
でもねぇ、卵の中から真っ黒なライス、食欲わきますかねぇー?)、
かぼちゃライスのハロウィンシチュー、かぼちゃをかたどったケーキの類は
まあいいとして、鮭缶鯖缶もハロウィンsale、
商魂たくましさが、いかにもジャパニーズ?

そもそもハロウィンは、古代ケルト民族の信仰に起源があるそうです。
一年の終わりに、この世とあの世の間の目に見えない「門」が開き、
死者の霊が家族のもとに帰ってくる、その時、どさくさに紛れて
一緒に門をくぐりぬけてくる悪い精霊や魔物たち(近頃の言い方では
サタンですか?)がいます。
この世に災いをもたらし悪事を働く魔物たちから身を守るために、
人々は魔物が恐れる仮装を身にまとい、カボチャのお化けちょうちんに
火を灯した、というのがハロウィンの始まりです。

わが国でハロウィンの認知度が高まったのは20世紀の終わりころ、
開業して間もないディズニーランドが持ち込んだ
ハロウィンイベントからだといいます。
SNSの時代、信仰の話とは別に、インスタ映えするコスプレバーティーが
若者たちの心を捉えるのに時間は要らなかったようです。

ハロウィンでの基本的なコスプレは、黒い衣装の魔女。
帽子をかぶり、ワンピースやマントを身に纏い、右手にスティックを持つ魔女、
ヨーロッパ社会では、超自然的な力を持ち、この世とあの世をつなぐ存在だと
今も信じられています。

ところで、日本にも同じような信仰、「お盆」がありますね。
仏教の世界では毎年7月1日になると地獄の釜の蓋が開き、
あの世からご先祖様が帰ってくるのです。
まっ、ハロウィンと似たようなもので、お帰りになったご先祖様に
お供えをしてもてなし、お酒を酌み交わし、やぐら太鼓のリズムに合わせ
ご先祖様たちと一緒に盆踊りを楽しむという季節の行事です。

ハロウィンは、日本のお盆にも似たご先祖様供養の厳かな行事であるはずなのに、
近年、脱線ハロウィンで警察のご厄介になるケースが多くなりました。
行き過ぎた仮装で、酔っ払って大暴れ、騒音、バイクや車の暴走、
仮装で別人格になっちゃうのでしょうか。
格闘ゲームのメタバースで、アバターとして強者に化けるのと同じ?
同日の夕刊に「ハロウィン・渋谷の街は戒厳令」
店主たちは早々にシャッターを下ろし、警察も取り締まりを強化するという
記事が掲載されていました。

秋の夜長、ハロウィンも結構ですが、我が家で家族と鍋を囲みながら
ゆっくり一杯、およそ日本的な伝統食「鍋」で芽生える仲間意識。
新たな変異オミクロン株の急増の折、コロナが完全収束するまで
密への突撃は控えた方が賢明なようです。
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J's B-press VOL.114(2022.09.30)

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コラム『明鏡止水』 〜初心は気高く〜
本田宗一郎さん、世界のホンダの創業者です。
もちろん、いきなり世界一になったわけではありません。
昭和21年、浜松でホンダの前身となる本田技術研究所を創業、
戦後の復興ままならない頃の日本、移動手段にこと欠いていた人々は
ホンダが発売した自転車に毛の生えたようなバイクを競って買い求めました。

急成長した本田技研は、昭和25年、北区上十条に東京工場を構えます。
当時の王子信用金庫志村支店には、孫請けの部品製造会社から毎月
本田技研振出の手形がかなりもちこまれ、割引のお取引をいただいたと
先輩たちから聞いています。

さて、伝説の人・本田宗一郎さんの、これまた伝説の引退表明。
昭和48年、創立25周年を迎え、世界のホンダとして躍進著しい業績のなか、
電撃的に社長引退を発表したのです。

昭和40年代は、米国でも日本でも、大気汚染などの公害が大きな社会問題に
なりつつあり、自動車のまき散らす有毒排気ガスを規制しようと、
米国では、排ガスの汚染物質を従来車の1/10にすることを求める
「大気正常法(マスキー法)」が制定されました。
当時、ホンダは4輪車の後発メーカーでしたが、
この厳しい排ガス基準をクリアするために、優秀な頭脳集団が知恵を絞り、
全く発想を変えた低公害エンジン(CVCC)を、世界に先駆け完成させました。

「CVCC開発に取り組んでいた頃のこと、ある日、若い研究員と
エレベーターで一緒になったとき、低公害エンジンで世界のビッグ3を抜いて、
ホンダを世界一にするんだぞ、と声をかけたところ、彼は
『私たちは世界で初の低公害エンジンを開発して、クリーンな地球をつくり
世の中のお役に立つことを夢見て入社しました。他の自動車メーカーを
追い抜くためではありません!』と主張して、私の目を開かせてくれました」
「創業当時は、とにかく世の中を便利にして町の人たちに笑顔で喜んでもらいたい、
その一念で、油まみれになりながら寝食を忘れ懸命に働きました。それがいつしか
『会社のために』となってしまっていたことに、気づかなかったのです。
世の人々のため、という本来の精神が失われていたことを、
若い人に気づかされました。その時、社長引退を決意しました」

理想に燃えた初心、忘れてしまってはいけません。
人間、死ぬまで青春が大切です。青春は理想高く、清らかだからです。
(その後、CVCCの技術は広く世界に公表され、供与されました)

信用金庫の採用面接でも、若者たちが、信金を選択した理由を異口同音に
「圧倒的多数の中小企業で、懸命に汗を流している方たちのお役に立ちたい
と思っています。個人を含め、経済的弱者が力を合わせて出資し、
創設したという、信金の弱者救済の精神に心酔しています」と語ります。
まさに信金ならではの初心です。
ゼロゼロ融資の期限が到来しています。当初、コロナは1〜2年で収束し、
必ず以前のような平穏な景気が戻ると信じて借入された方も多かったのに、
一向に戻る気配が見られません。
さあ、これからが信金の本領発揮、私たちの初心を熱く思い出す時です。
いま何をするべきか、一人ひとりが考え行動し、
困難な状況をアクティブにブレイクスルーしていきましょう!

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J's B-press VOL.113(2022.08.31)

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コラム『明鏡止水』 ~ブラック校則~

髪型ツーブロックは禁止、ポニーテールも禁止。一部地域の中・高校に、
今も残る校則に関する議論があります(都立高校は昨年撤廃されたようです)。
校則とは学「校」の規「則」を縮めたもの、則というのは「ある特定の
社会集団の中で守られるべき取り決め、おきて、定め」とありますから、
校則の中に「ツーブロック禁止」と記載があれば、その学校の構成員(?)
である生徒は、これを守らなければいけないということになります。
ツーブロックなんて、TVにもネットにも当たり前のように溢れているのに
なぜ校則ではダメなのか?
一説によれば「極端な髪形であり、いじめの対象になる」「高校生らしくない」
・・・そうですかねぇ?
ポニーテールは「毛先が目に刺さって危険だから」禁止、髪を結ぶ位置は
耳より下でなければならない、なぜなら「男子がうなじを見て欲情するから」???
生徒に禁止の理由を尋ねられた教師の返答が「政府がそう言っているから」
・・・ホントですか???
今や、うなじどころか肌もあらわなファッションの女性が街中に溢れているのに。
はたまた、下着の色を白と指定し、それを確認する行為は
人権問題になりかねないとして、文科省が見直しを求める通知を出したとのこと。
チェックの楽しみを奪われて残念がる先生がいらっしゃるのでは・・・
というのは邪推が過ぎるでしょうか。

さて、「~してはいけない」という規則は、ひとつの不自由を強いることになります。
僕には私には、したいことをする自由がある、ツーブロックでもポニーテールでも
誰に迷惑をかけるわけじゃないのに、「いけない」と縛るなよ、自由にさせてよ、
という主張が聞こえてきそうです。
「自由」という言葉、諸説あるでしょうが一般的な辞書には
「心のままであること、あるいは外的束縛や強制がないこと」とあります。
よく考えてみますと、束縛や強制というものがなければ、
何をしたってかまわないわけですから、窮屈さはまったく感じませんよね。
つまり、束縛や強制によって言動が制限される状態を「不自由」といい、
制限から解放された状態を「自由」というわけです。
不自由あっての自由、自由とは不自由に比較した言葉だといった方が
わかりやすいかもしれませんね。

学校にも、企業にも、もちろん家庭の中にも、集団にはそれぞれ
あるべき姿や目指すべき目標が描かれ、共有されているはずです。
目的を効率よく達成するために、力を合わせて努力邁進するのですから
メンバーの動きがてんでんばらばらにならないよう、
最低限の取り決め、規則が必要になります。
そして取り決めの内容には、多少意に沿わないもの、
不自由を強いられるものも当然に含まれます。
だからこそ、取り決めの内容が生徒や社員・職員の実情、地域の状況、
社会の常識、豊かさや品性、時代の変化などを踏まえたものになっているか、
ズレが生じないよう絶えず見直しが必要です。

きっとだれもが好きな「自由」、その向こう側には
「なにか起きたら責任をとる」がワンセットであること、
これだけは忘れないようにしたいものです。

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J's B-press VOL.112(2022.07.29)

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コラム『明鏡止水』 ~常時接続の功罪~

スマホネイティブの若者世代、スマホは常時接続、歩きながらはもちろん
トイレにも風呂場にも持ち込み、手放すことはないようです。
コミュニティーにおける調和を最重視する世代ですから、どんな状況であっても
つながることが最優先されなければいけない、という暗黙のルールかもしれません。
共有アプリに位置情報を入れておけば、仲間の誰が今どこにいるということも
把握されてしまいますから、うっかり嘘をつくことも許されないわけです。
窮屈さを感じて抜け出そうとすると、話の輪にも入れてもらえなくなります。
仲間に入っていることが一番大切だと思っている世代ですから、
多少の犠牲を払っても、グループに身を委ねている方が安心なのでしょうね。

一日にどのくらいスマホを利用しているか、年代によって差はありますが
統計によれば、高校生・大学生では6~7時間は当たり前のようです。
LINEやTwitter、インスタといったコミュニケーションツールのほかにも
ゲームや音楽、YouTubeにTikTok、なかには英単アプリで学習中という方も・・・。
社会人であれば、営業担当者が商品の説明ツールとして商談に使うとか、
主婦層では、スーパーの特売情報やショッピングなど暮らしのツールとして・・・と
世代によってスマホの位置づけも少しずつ変わってきます。
耳の不自由な方がリモートカメラを使って手話で会話を、
また、映画館では日本映画に字幕スーパーは表示されないけれど、
スマホのアプリなら見られる、というのも肯けるコメントでした。

3Gから4G、さらに5Gへと通信技術は進化を続け、アプリもスマホ自体も
どんどん機能が向上していきます。スマホさえ持っていればなんでもOK、
信金の窓口に出向く必要ってあるの?現金なんて持たなくていいじゃない、
危ないし?・・・なーんて声も聞こえてきます。

その一方で、スマホの長時間使用による弊害も起きています。
眼精疲労、肩こり、頭痛、急激な視力低下、めまい等で、
病院に駆け込む方が増えているのです。
スマホは確かに便利なツールですから、知らず知らずに依存する傾向が
強くなっていきます。風呂場に持ち込むなんて、かなりの依存度ですよね。
気がついたら、人がスマホを使っているのか、スマホに人が使われているのか、
どちらが主体か分からなくなる状態も、往々にして見かけます。
常時接続のストレスに、身体が悲鳴を上げ、息苦しさを覚える人が増えてきた、
そのことに、目を向ける必要がありそうです。
常につながっている、ということは、考えようによっては
常に監視されているような状況、と言い換えることもできます。
つながりを強制されているようで、一人になる時間すら否定されてしまう、
自分と周囲の境界線があいまいになってしまう、
そんな怖れを感じる方も増えているといいます。

一定の使用時間が経過したら、PCやスマホ等のデジタルデバイスから距離を置き、
ストレスを軽減する時間を持つことを「デジタルデトックス」といいますが、
自分をリセットする意味でも、ネット上のつながりを整理する必要がありそうです。
アカウントを削除するのは、仲間外れになるような気分で、
勇気のいることには違いありません。
でも、数あるアカウントの中からいくつか削除、解除してみると、
意外とすっきりした、という人が多いことも見逃せない事実です。
ネットの時代、世の中が広くなると感じる反面、
自分の居場所を狭くしていることにも気づくことが大切です。

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J's B-press VOL.111(2022.06.30)

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コラム『明鏡止水』 ~カラス~

特別信仰に篤いわけではありませんが、
わが家から五分ばかりのところに、氏神様として祀られる神社があります。
小さな神社でも緑の匂いは涼を吸い込むようで、気持のいいものです。

今月はじめ、散歩がてらぶらりと鳥居をくぐりました。
わずかなお賽銭を投げ入れ「じゃらりじゃらじゃら」頭上の鈴を鳴らし
二礼二拍手、慣行に倣い健康を願いました。大して格式のある神社ではない?
まあ承知はしておりましたが、新しくご由緒を刻んだ石碑が建てられて
いましたので、目をとめて読むことにしました。
江戸時代に、徳川将軍が日光東照宮に参詣する際に利用した日光御成道、
その第一の宿場として栄えた岩淵宿の鎮守社、なるほど。
で、ご祭神は「スサノオノミコト」。暴力団員のような粗暴な男スサノオねぇー、
八頭のオロチをやっつけて、姉ちゃんのアマテラスが閉じこもった岩戸を
開けたんだっけ、ふむ。石碑に気に取られていたところ頭上でいきなり激しい音が。
いかにも怒りをあらわにした鳴き声「ぐわっ、がおーっ」、羽を広げ威嚇のポーズ、
見上げると不気味なカラス、小枝を喰いちぎっては投げ、むしりとっては投げ・・・。
カラスは「かぁーかぁー」、七つの子がいて「かわいい、かわいいと鳴くんだよ」
あれはウソです。どう猛なイノシシやワニの雄叫びそっくり、
どうやら、子育ての真っ最中ということに気がつきました。
本来は臆病で慎重な性格のカラスは、自分から人間に近づいていくことは
少ないはずですが、繁殖期には子を守るために必死、
気が立って凶暴になるといいます。まさにそれでした。
きっと呼んだのでしょう、近くから数羽の援軍がやってきまして、
威嚇の編隊低空飛行、やっとの思いで鳥居の外に出て難を逃れました。
狂暴が売りのスサノオ、奇襲に目の色変えるカラス、共通項を見た気分です。

都内では、路上に出された家庭ごみを食い散らかすカラス公害が多発しています。
いくらネットを被せても、数羽がネットを持ち上げ、隙間から別のカラスが
食料をゲットするといったチームプレーを、いとも簡単に展開するカラスです。
各地公体でカラスの嫌いな?黄色のネットを使うとか、
防戦に苦労しているようですが、効果のほどは今一歩、
やっぱり、しっかりとした金属製のごみボックスを設置するのが最善のようです。
きれいな街づくりは住人の義務でもありますから。

その他のカラスの公害話は別の機会に譲るとして、知能の高さについて少しだけ。
硬い木の実や貝を車の通る路上に置き、轢かせて割れたところを食べるとか、
くちばしと足を使って水道の蛇口をひねり、水を飲むなんて朝メシ前、
人の顔も識別して、いじめられた相手に的確な?仕返しをするともいわれます。

東京近郊でみられるカラスは、殆どがハシブトカラスという種類、色は真っ黒。
なぜ黒いのか、諸説ありますが「カラスは元々白い鳥だったが、フクロウの染物屋に
塗り替えを頼んだところ、黒地に金や銀で模様を描けば、上品で美しく仕上がると
考えたフクロウは、カラスの全身を真っ黒に塗りました。全身真っ黒が仕上がりと
勘違いしたカラスは、怒ってフクロウを追い掛け回しました。それでフクロウは、
カラスが飛ばない夜にしか表に出られなくなりました」もっともらしい話ですよね。
最近の女性ファッション、夏に真っ黒がちょっぴり流行?染められたのですかね?

民話や神話にたびたび登場するカラスですが、
エピローグは日本サッカー協会のシンボルマーク、八咫烏(やたがらす)です。
先ほどの御祭神スサノオの姉さん、アマテラスの五世代孫にあたる神武天皇(日本の
初代天皇と日本書紀に記されているそうですが、興味のある方はお調べください)、
熊野から大和平定に向かう神武天皇を、三本足の八咫烏が松明を掲げ道案内した、
まさに吉兆を示す鳥がカラス。「ニッポンちゃちゃちゃ」の源流です?

申し上げたかったのは、繁殖期のカラスは狂暴だから近寄らぬようにということ。
加えて、梅雨明け、猛暑、くっきりとした輪郭の陽射し、
熱中症にはくれぐれもご用心を・・・。

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J's B-press VOL.110(2022.05.28)

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「笑うのは人間だけ」と言ったのは、
古代ギリシャの哲学者アリストテレスだそうです。
犬好きな方や猫好きな方の中には「ウチのワンちゃんは間違いなく笑うわよ」とか
「わが家のネコは、好きなものをだすと笑って食べるよ」
そうおっしゃる方がいらっしゃるかもしれませんが、
わんわんと吠える(啼く?)犬が、相好崩して「けっけっけーー」とか
「うっひっひー」・・・ちょっと信じられませんね。
歯をむき出しにして「ぐわーっ」「ガオーッ」、怒りをあらわにして
バトルを繰り広げる犬猫、憤りに関しては実に豊かな表情?を表します。
ちぎれそうになるほど尻尾を振り回しての喜び、これもわかります。
でも、笑っているのかどうかは、誰も確かめられていないはずです。

さて今月のテーマは笑い。人間、嬉しいこと楽しいことがあると自然に笑顔がでます。
当金庫の庫内報、新人紹介の写真は全員が弾けんばかりの笑顔、
五月晴れの空から、とっておきの笑い声が舞いおりてくるような気がします。
ところが世界を見渡しますと、至る所で一触即発の感がある有事の恐怖、
破壊力のあるミサイルが飛び交い、民家や橋梁が瞬時に瓦礫と化しています。
コロナは相変わらず終息の気配がなく、景気も不透明、
世の中暗澹たる話題だらけで、笑いどころか、誰しも表情が曇ります。
「笑う門には福がくる」、こんな時こそ人間だけができる大きな特技、
笑顔を思い出し、苦難を乗り越えるのが何よりも大切なことなのでしょう。

「笑いは免疫力を高める」と言われます。筑波大学の久野研究室によれば、
人間が生まれながらにして持っている免疫細胞のひとつ「NK細胞(※1)」は、
笑うことによって活性化され、細菌やウイルスを攻撃する効果があるのだそうです。
マスク着用で互いの笑顔が見えず、大声で笑うのも憚られる昨今ですが、
職場でも家庭でも意識的に楽しい会話を増やし、笑顔で挨拶を交わし、
時にはお笑い番組や楽しい映画でも見て、NK細胞を刺激し免疫力を高めて下さい。

「幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだ」という言葉もありますね。
幸せのバロメーターは笑いの量、笑うことは幸せへの近道と言われます。
笑顔千両、たとえお愛想笑いでも人を和ませ、
円滑なコミュニケーションを生み出す効果があるからです。
現実はそう楽しいことばかりではなく、難しいことや悲しい出来事に
ついつい険しい顔や厳しい声になりがちですが、そんな時こそ笑顔の出番。
ニッコリ笑って難敵に挑戦する努力が大事なのです。案ずるより産むが易し、
簡単ですよ、楽しかったあの日の笑顔を真似してみればいいのですから。

仏教では、誰もができるお金のかからない施しのひとつに
「和顔施」があります(※2)。
これだって笑顔千両と似たようなもの、難しいことではありません。
笑顔でチャレンジすれば何ごとも叶う、明るい方向にものを考え直す
「陽転思考」という習慣を身につけましょう、というだけのことです。

LINEで皆さんよくお使いになるニコちゃんマークのスタンプ、
あれって「笑顔」そのものでしょ。
笑顔がコミュニケーションに効果的なことは、みんな知ってるんですよねっ。

笑顔は、きっと人々に幸せをもたらしてくれるはず。
世界精神医学会(WPA)が定めた「ワールドスマイルデー」は
10月の第一金曜日だそうです。その頃にはきっと
ロシア・ウクライナにも笑顔が戻ることを願って。

※1:NK(ナチュラルキラー)細胞。体の防衛機能として人が生まれながらに備えて
いる細胞で、ウイルスや病原菌を攻撃する善玉細胞です。
※2:和顔施(わがんせ)。「無財の七施」のひとつで、心を平らにやさしい
笑顔で語りかけ、耳を傾けることです。

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J's B-press VOL.109(2022.04.28)

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コラム『明鏡止水』 ~年の交通違反取締り事情~

四月は入学式の季節。
幼稚園から小学校へ、少しお兄さん・お姉さんになる年頃です。
大きなランドセルを背に初めての通学、意気揚々とはしゃぐ子もいれば、
不安げにしょんぼりうつむきお母さんの手をきつく握りしめている子も。
早くも人生模様のスタートです。
そんな学童を交通事故から守るため、毎年実施されるのが交通安全週間です。
信金職員も、毎日キャノピーや自転車で町を走り回ります。
プライベートでも、自転車や車のハンドルを握る機会の多い今の時代、
くれぐれも、安全運転の励行をお願いします。
さて、車両の進歩は目覚ましく完全自動運転までもう一歩、
一方で、進化しないのは交通事故と交通違反、
今回は、最近の交通違反取締の傾向について、少し触れてみたいと思います

交通違反で検挙される件数(違反切符を切られること)は、
年間約500万~600万件、平成の中頃は1,000万件を超えていましたから、
違反は少なくなりました。
ところが、違反の種別には大きな変化がみられます。
以前は、スピード違反が最多でしたが、ここ数年は、群を抜いて多いのが
一時停止違反、次いで歩行者妨害違反の順になっています。
(スピード違反の減少は、レーダーセンサーの取り付け効果なのでしょうか?)

一時停止違反、正式名称?は「指定場所一時不停止違反」といいます。
一時停止の赤い▽標識のある場所には、必ず白の停止線があります。
その停止線は、必ずしも交差する道路の左右が見通せる場所とは限りません。
停止線を越えて見通しのきく場所で停止すると手遅れ、立派な違反になります。
停止線の手前で一旦しっかり停まり、一呼吸おいてゆっくり発進、徐行をして
左右を確認、安全を確認したら交差点を渡る、というのが正しい一時停止の方法です。

車両の通行がほとんどない時間帯の交差点にも、一時停止の標識があります。
最徐行をしても、完全に停車せずにうっかり交差点に進入すると、突然、警察官が
電柱の陰から躍り出て(実に的確な表現だと自画自賛しています?)ピッピッピー!
「停まりましたよ!」「ちょっと甘かったですねぇ~」
(実際に日暮里駅前でキップを切られた時の会話そのものです)
水掛け論になってサインをしなくても、検察にいくと警察官の意見通りに
なっちゃうと言いますから、ムダな抵抗はしない方がよろしいようです。
そうそう、言い忘れないうちに申し上げておきますけれど、
自転車にも一時停止義務があります。車より重い3か月以下の懲役、
5万円以下の罰金のあることを知っておいてください。

一時停止違反と同じように、最近の取り締まりで厳しくなっているのが
歩行者妨害です。つい先日、さいたまの隅っこで見た取り締まりの風景、
信号機のない三差路で、左折のため停まっていました。
おばあさんが横断歩道を渡ろうとしていたところを、右から軽自動車が
ス~ッと通り過ぎました。
その瞬間、どこから現れたのでしょうか、けたたましいサイレンが鳴り響き
白バイが軽自動車を追って停車を命じました。
ちょっと意地悪に取り締まりの様子を見ていたところ、やや年配のドライバーが
「なんだ?」という表情で抵抗の気配。白バイの警官、おもむろに
スマホで歩行者妨害の動画を指さしながら見せていました。
取り締まりにもスマホが活躍、「言い逃れはさせないぞ」の心意気?
歩行者が横断歩道に足を踏み出した瞬間、赤信号になったのです。
完全に停車しなければいけません。それが歩行者優先の原則です。
たとえ歩行者が「どうぞ」と手で譲る合図をしても、車両を進めれば
歩行者妨害違反になること、覚えておいて下さい。
もちろん自転車も同様、処罰の対象です。

つい気の緩みがちな初夏の連休、違反で検挙されて罰金刑、
気が滅入るまえにくれぐれもご注意を。老婆心まで。

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J's B-press VOL.108(2022.03.31)

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コラム『明鏡止水』 ~なに気なく使うPCやスマホにも罠~

トヨタ自動車の仕入先である部品製造会社のサーバが、身代金要求型
ウイルス「ランサムウェア」に侵され、トヨタ自動車の国内全工場が
操業を停止する事態に至った、との報道がありました。
このようなランサムウェアによるサイバー攻撃は、ネットにつながる
機器が溢れる私たちの環境では、常に隣り合わせにいます。
かつて信金でも、サイバー攻撃によってシステム障害が起き、
サイトの改ざんが行われた事例がありました。
また、病院のシステムが侵入され、重要な個人情報である
患者のカルテが閲覧不能になり、復元を条件に、
追跡が難しい暗号資産で身代金が要求される事件も起きています。

侵入手口は、ごく日常的な電子メールであることが多いようです。
同僚や取引先になりすましたメールが届き、つい開けてしまうような
普通を装った添付ファイルを開いたとたん、ウイルスが侵入します。
侵入してすぐに障害を生じさせるものばかりではなく、
感染後も何の変化も見せずに作動し続け、さらにウイルスを拡散する
ケースも確認されています。このような場合には、利用者だけでなく
他の機器にも感染が拡大、気づいたときにはトヨタのように
全体を休止せざるを得ない状態になってしまうのです。

被害に遭う企業はシステムが古かったり、最新ソフトへの更新を怠って
いたりするようですが、パソコンを操作する担当者のうっかりミスが、
やはり最大の原因に違いありません。
IOTの世の中、テレワークも常態化していますし、
日常業務においてネット利用は欠かせません。
業務のメールに紛れて、ランサムウェアを含んだメールが
飛び込んでくる危険性は常にあります。
感性を研ぎ澄ませ、「あれっ変だな?」と思ったら開かずに即ゴミ箱に、
危うきには絶対近寄らないようにすることが大切です。

ついでに、最近多いサブスク・リスクについてちょっと触れておきましょう。
動画視聴サービスなどで、「お試し無料」の表示に釣られて
ついサブスクをクリック、ところがお試し期間終了後は
有料サービスに自動更新される仕組みが多く、
利用者自身が解約しない限り、課金サービスは継続されてしまいます。
(解約のオペレーション、これがまたメチャ複雑怪奇です)
国民生活センターのウェブ版「国民生活」では、サブスクにまつわる
トラブルは、「入会の失敗より、解約や退会に失敗するほうが遥かに多い」
と指摘して、注意を呼び掛けています。
ご本人は勿論ですが、お子さま、お年寄りのいらっしゃるご家庭では
トラブルに巻き込まれないよう十分注意をして下さい。
DXの世の中、「ハイ・サービス/ハイ・リスク」、肝に銘じながらお使い下さい。

コロナウイルスも、相変わらず日々数万人の感染が続いています。
最初は20~30人の感染にも震え上がっていたのに、いつしか感覚のマヒ?
PCやスマホで当たり前のように利用しているインターネットも、
つい緩くなってしまっている感性、戒めなければいけません。

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J's B-press VOL.107(2022.02.28)

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コラム『明鏡止水』 ~値上げの嵐~

みなさんお気づきのことと思いますが、身の回りの生活必需品や
サービスの価格が急激に上昇しています。
身近な品目の代表格は灯油でしょうか。昨年の一月頃は18Lで
1,500円程度であったのに、今年は2,000円を超す価格に跳ね上がりました。
LPGも同様、上昇率は30%と生活を直撃しています。
そして、ロシアのウクライナ侵攻のショッキングなニュース、
原油も天然ガスも食料品も、価格は暴騰していきそうです。

脱炭素が世界の潮流でありながら、消費電力の70%を火力に頼らないと
供給不足になってしまうのが、偽らざる日本の姿。
燃料となる液化天然ガスなどの暴騰は、電力会社のコストを押し上げ、
結果的に、電力の利用者である私たちが負担する電気代は
一年間で15%以上も上昇、家計の光熱費は膨らむばかりです。

値上がりの話ばかりで恐縮ですが、別名「国民食」ともいわれる「うまい棒」、
40年続いたお値段10円が12円になるって・・・。たったの2円ですが
もとがお安いだけに20%up!・・・給料20%up???あり得ません!
総務省が発表した個別品目の一年前との価格上昇率は、ブリが28%、
マグロは16%、たこ焼きに入るタコは22%も上がっています。
確かに、魚を獲るには船を出して漁をします。船を動かすには燃料が
必要ですから、高いブリ・タコとなるのは仕方ないことなのでしょう。

また、トマトやアスパラ、ピーマン、苺やメロン等、本来「旬」のある食物も
季節を問わず一年を通してスーパーに並び、私たちの食卓にあがります。
これらの大半はハウス栽培です。
冬でも、暖房によってハウス内温度を調節して生産するため、暖房費が
かさみ、市販価格を一年で20~25%も引き上げることになっています。

さらに、多くの食品の主原材料である小麦、油、バター等は輸入食品、
品不足に加えて、円安が物価を押し上げています。
輸入牛肉の値上がりも激しく、昨年暮れ頃から吉野家、すき屋、松屋
いずれも15%程度の値上げが実施されました。

密で感染は怖いからとネットで買い物、商品代より送料の方が高い?
送料、手数料って高いですよね。
uber eats、あの宅配料も、購入商品のさて何%になるのでしょうか?
ティッシュペーパーは小さくなって、トイレットペーパーも短くなって、
医療費は高くなるし、ユニクロだってじわじわと価格が・・・。

米国の調査データでは、2021/9までの半年の間に、
大きく貯蓄が取り崩され始めました。コロナによる企業の経営悪化が
個々人の収入を減少させ、そこに生活必需品のインフレが加わって、
貯えの取り崩しを招いたことは明らかです。
やがて日本でも、同じような現象が起きることは間違いありません。

ポストコロナの社会がどんなものであるかわかりませんが、
今後増加するだろう失業者への失業保険給付や、企業への緊急支援助成金
といった社会保障費負担は、財政を一層圧迫していきます。
それを支えるのは私たちの税金です。住みにくい世の中になってきました。
今のところ、東京に砲弾が飛んでくる心配はなさそうですが、インフレ社会
という攻撃に備え、それぞれがしっかり生活設計を描く必要がありそうです。

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J's B-press VOL.106(2022.01.31)

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コラム『明鏡止水』~ハゲタカ~

マスコミ報道は、企業買収を「功利打算に目のくらんだ乗っ取り」という
偏執とも思えるような書き方をしています。
株式会社の議決は、賛成株数の多寡で決定されるのが原則です。
昨年暮れに「SBIグループは新生銀行の株式の48%を取得、
さらに、現在の株価にプレミアムをつけて公開買い付けの応募を発表、
SBIによる新生銀行の買収(TOB)はほぼ成功した」との報道がありました。
経済専門紙ですから、企業の支配権が移動することを記事にするのは
多数の上場会社利害関係人に対する情報提供として、必要なことではあります。
しかし、「新生銀行の役職員の皆さんの思いって、どんなものなんだろう?
報道には全く出てこないけれど・・・」記事を読みながら、ふと気になりました。
きっと「寝耳に水」の職員も多かったのだろうと思います。
ネットに溢れる新生銀行職員の書き込みには、
組織、処遇、先行きへの不安が限りなく続きます。
中には、買い占めに気づかなかった経営陣のぼんくらさに対する批判もあります。
というわけで今回は、企業買収を社員の立場から考えてみたいと思います。

企業買収の裏側は、己の利益だけに目のくらんだ一塊の株主が、水面下で
秘かに株を買い漁り、発言権が認められる株数になった時、突如姿を現して
票数の多寡にものを言わせ、会社の人事や経営に顔を突っ込むことが常套手段です。
株価を上げて差益を得るためには、期間利益の極限化が必要です。
組織の合理化・効率化と称して、人員の削減、賃金や手当の見直しによる
人件費削減が実施されるのは目に見えています。
案の定、一月には経営陣の大半は辞任させられ、
新経営陣が外部から送り込まれた、という報道がありました。

企業にはそれぞれ、長年培われた伝統、習慣があります。
しかし、利益極限化を金科玉条として外部から送り込まれた人たちにとっては、
およそ非近代的で非効率・不合理な組織を、そこに見ることになるのでしょう。
変えろ、変えられなければ止めろ・・・。
いたるところで、確執とぶつかり合いが起きるのは、至極当然のことです。
ネットに、「SBIグループの買い付けは、新生銀行の地域社会に対する姿勢とは
異なるものがありますので、買い付けに応募しないで下さい」という、
悲鳴にも似た広告がありました(今となってはまるで色褪せた空しいものですが)。

流行り言葉のようなESG、企業が限りなく発展するために必要な要素として、
環境Eと社会S、そしてG、企業統治という言葉が当てはめられています。
企業統治とは、己の内容を熟知してフェアに振る舞えということなのでしょう。
会社って議決権を持つ株主のもの、そんなことは中学生でもわかっています、
でもそれだけなのでしょうか?
憧れて入ったgoing concernを旨とする企業、社会に貢献しようと
熱く滾る思いをもつ役職員の多さも企業統治のはずなのに、
一連の報道にはそれが全く見えません。

もちろん、経営者や幹部社員にとって、株式という会社の資本の動きを
常に掌握していることは最低限度の義務であるはずなのに、
それを疎かにしてしまった義務違反は、責められても仕方ありません。
内定をもらって頬を緩めていた学生さん、もうすぐ生まれる赤ちゃんを
お腹に抱えている産休中のママ、まだまだ続く住宅ローンの返済・・・。
新生銀行職員の皆さんのことを考えると心が痛みます。
明日は我が身、地域社会に、家族に、素晴らしい待遇を提供してくれる職場に、
感謝の心をもって熱く仕事に取り組んでいただきたいと思います。

乗っ取りにみられる功利打算は、不況期に突入する世の流れかもしれません。
でも「企業は人なり」ともいいます。私たち一人ひとりの情熱や能力が
当金庫に対するお客さまの評価を決める、それをしっかり肝に銘じたいものです。

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J's B-press VOL.105(2021.12.30)

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コラム『明鏡止水』~火の用心~

「マッチ一本火事の元、火の用~心~♪」
拍子木を鳴らしながら冬の街を歩く自警団、懐かしい昭和の風景です。
こんな夜回りの歴史は古く、江戸時代のころに始まったそうです。
消防技術の心もとない時代でしたから、いちど火がでると
なす術もなく燃え広がり、大惨事になってしまいました。
「火事と喧嘩は江戸の華」あまり名誉にならない諺が
いまも語り継がれています。
とりわけ、江戸時代に起きた明暦の大火(1657年)、別名、
「振袖火事」は、歌舞伎や浄瑠璃の演目になるほど有名です。
死者十万人を超したといわれる明暦の大火、
火事の恐ろしさを教訓に、幕府は防火対策のおふれを出しました。
そのひとつが
「町中の者は交代で夜番すべし、店子たちは各々火の用心を厳重にすべし」
これが夜回りのはじまりです。

暮れも迫る十二月、大阪のビルで放火による火災、
お気の毒なことに多くの犠牲者がでてしまいました。
医師、看護師、多数の患者さんの出入りするクリニックの床にガソリンを撒き、
退路を妨げながら火をつけるという残忍卑劣な殺人犯罪でした。
同じく多数の犠牲者が出てしまった京都アニメの放火事件も
記憶に新しいところです。

無差別テロのような悪意の放火、防ぎようのない極悪犯罪ですが、過去、
明らかに放火で起きた火災は年間約3,500件、放火の疑いを加えると年間5~6,000件、
火災全体の30%を占めていますから、警戒するに越したことはありません。
まさかの時に備え、常に避難路を確認する習慣をつける、住まいや身の回りに
燃えやすいものは置かない、消火器の設置場所の確認やバケツ一杯の水を
用意しておく程度は、家庭や職場を守る誰もが心がけなければいけません。

また、消防庁の公表統計によれば「失火」による火災が70%を占めます。
失火原因の最多はタバコの火の不始末、
次いでコンロ、ストーブ、電気器具の不具合と続きます。
灰皿のある場所で吸い、きちんと火が消えたことを確認するのは当たり前、
道を歩きながらの喫煙、ましてやポイ捨てなんか放火と同罪、
喫煙愛好者の方々、くれぐれもマナーを守っていただきたいと思います。

電気器具の接触不具合からの発火も、失火原因の上位です。
コンセントに付着した綿ぼこりに引火して、タコ足配線の過負荷から過熱して、
家電の消し忘れから発火して・・・。
やっぱり、日常生活における整理整頓、掃除、後始末、
幼いころからのしつけ教育と無縁ではないようです。

放火の最高刑は昔も今も「死罪」、失火であっても、
他人様の大切な財産を根こそぎ奪ってしまうことになります。
寒さ本番、暖を手放せない季節ですが、火の元には十分気をつけてください。
今年も一年間ご愛読ありがとうございました。

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J's B-press VOL.104(2021.11.30)

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コラム『明鏡止水』~ふるさと納税で税を身近に~

2008(平成20)年4月の地方税法等の改正によって
「ふるさと納税」制度がスタートしました。
この制度は、人口減少による税収の減少への対応や、地方と大都市の格差是正を
目的とするものですが、生まれ故郷はもちろん、お世話になった地域に、
そして応援したい地域や人たちの力になれる制度なのです。
支援金額の約30%が返礼品の対象となり、残額が自治体に納付されます。
返礼品は多岐にわたり、リンゴやみかん、魚や肉、野菜といった地方の特産品の他、
自然保護、災害復興、伝統文化の伝承等、目的を特定する支援も可能です。
開始以来、魅力的な返礼品が人気を呼び年々急増、2020年度には全国で
約3,500万件・6,800億円のふるさと納税が行われるようになりました。

さて、ふるさと納税には「返礼品なし」という支援もあります。
社会のためにご苦労いただいている方たちへの感謝を支援という形で表す、
そんなふるさと納税をとり上げてみました。

どの地方でも、新型コロナウイルス感染症の最前線に立つ医療従事者は、
自身も感染するリスクを抱えながら、現場で激務にあたっていらっしゃいます。
感染力の強いコロナ、いくら感染しないよう防護はしていても、
初動でどうしても患者に直接触れることは避けられないのが現実だそうです。
万が一、自分が感染してしまった場合、家族に拡げてしまわないか、
子どもが通う学校で噂になり、心ない言葉を浴びたりしないだろうか・・・。
医療従事者のなかには、こうした心配から病院に寝泊まりするなど
精神的にも相当な負担が強いられています。

加えて、過酷な業務や感染リスクに対し、見合う報酬があるわけではありません。
激務と感染リスクから逃れたいと、退職を希望する看護師さんも多い、
という話はよく耳にします。
11月17日、日本看護協会は業務中に感染した看護職に、
3万円の見舞金を交付すると発表しました。
このような見舞金交付でもお分かりのように、激務のわりには
医療関係者は経済的に恵まれていないというのが現実なのです。

病院を抱えるとある自治体に「コロナと闘う医療関係者にご支援を」との
ふるさと納税の掲載がありました。
もちろん「返礼品なし」の医療支援ふるさと納税プロジェクトですが、
協賛した納税者の声です。
「医療従事者の皆さま、関係者の皆さま、いつも大変な状況のなか、
執務にあたっていただきありがとうございます。頭が下がります。
私にできることはこのプロジェクトを応援することだけですが、
少しでもお役に立てればと思い、寄付させて頂きます」

「資産活用と節税対策」平積みされる指南本、講演会の数々・・・。
私たち信用金庫のお客さまとの会話の中にも多い節税対策、
なかには、税に対してアレルギーを持たれている方も少なくありません。
しかし、国や自治体、社会は税金によって成り立っているわけです。
支援は少額からOKです。身近な税の使い道として
ぜひ「ふるさと納税」のサイトをご覧になって戴きたいと思います。

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J's B-press VOL.103(2021.10.29)

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コラム『明鏡止水』 ~デジタル庁~

「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」を掲げ、
9月1日、菅政権の目玉の一つである「デジタル庁」が発足しました。
「デジタルを活用して、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶこと
ができ、幸せが実現できる新しい社会の実現」を目指すというものです。

「日本のデジタル化は立ち遅れている」
従来も繰り返し指摘されていたことですが、新型コロナウイルスの
感染拡大により、改めてその事実があらわとなりました。
「オンライン可能」といいながら、業務はデジタル化されておらず、
自治体によって異なるマイナンバー制度への対応確認に追われる一方、
感染者数や空き病床数の把握はFAX中心、ワクチン予約では電話がパンク、
給付金などの申請手続きも煩雑・・・などなど混乱が続きました。

特に、給付金申請にまつわるトラブルや不正請求詐欺は象徴的でした。
IT社会は、デジタル化を基本としていることは言うまでもありません。
マイナンバーと口座を連動させることで給付金手続きができていれば、
申請トラブルや不正請求詐欺なんて、起きることはなかったはずなのに。
給付金以外にも行政から受けるサービスはたくさんあります。ところが
その基盤となるマイナンバーの普及は、遅々として進んでいないのが現状です。

「我が国は、すべての国民がITを積極的に活用し、その恩恵を最大限に
受けられる社会の実現に向け、早急に革命的かつ現実的な対応を行い、
5年以内に世界最先端のIT国家となることを目指す」と謳ったのは
「e‐Japan戦略」、今から約20年前のお話です。
5年後どころか20年後の今、IT先進国と言われるアメリカや中国、
インドと比べると、明らかに大きな遅れがあるようです。

さて、デジタル化が進めば利便性が増す、誰もが肯くけれど、同時に
プライバシーは守られるのだろうか、という心配が必ず出てきます。
最近、首都圏のJRの駅の一部で、顔認証付きの防犯カメラで重犯罪の
出所者を検知する仕組みが導入されていた、との報道がありました。
「使用方法についての明確なルールがない、社会的合意が不足している」
ということで利用は撤回されたようですが、
中国では、国家の安全という大きな観点からごく普通に採り入れられている
システムだと言われています。社会の仕組みによる国家権力の差なのでしょうか。

この「明鏡止水」でも何度も採りあげていますように、
私たちを取り囲む環境は、否応なしにデジタル化されてきています。
もちろん、信用金庫のお取引にも、デジタル化の波は押し寄せています。
高性能ATMの導入や、無通帳へのシフトといった効率化努力の一方で、
年金が振り込まれる日には、通帳と印鑑を握りしめた高齢の方が窓口に並びます。
キャッシュカードのご利用には
「機械の操作が複雑で」「暗証番号が覚えられなくて」「しまい忘れが・・・」
「キャッシュカードは振り込め詐欺に遭いそうだし」「カード一枚じゃ心配だわ」
といったお声が多数聞かれます。

かたや、スマホを握りしめて「おぎゃー」と生まれてくる(?)子どもたち、
小学生、幼稚園児ですら、
対戦型のゲームを小さな指で鮮やかにコントロールしています。
「誰一人取り残さない、人にやさしいデジタル化」

デジタル社会へのハードルは高そうですが、諸外国に遅れをとらぬよう
誰もがチャレンジしていかなければならない時代になっているのは
確かなことのようです。

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J's B-press VOL.102(2021.09.30)

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コラム『明鏡止水』 ~なにができる脱炭素~

10月と言えば秋まっさかり、暑過ぎず寒すぎず、季節の移ろいを
五感で楽しめるシーズンですが、近年の気候は少し変だと思いませんか?
気候変動の要因は人為的なもの、このままでは地球が壊れるというのに
なぜか日本人の意識は他人事です。
諸外国に比べ希薄な「環境への心配」、もう少し真面目に考えましょう、
というのが今回のコラムです。

二酸化炭素(CO2)に代表される「温室効果ガス」は、太陽熱を蓄積して
地表に戻す性質(温室効果)を持っていますが、ガソリン車や火力発電など、
人類がお構いなしに排ガスをまき散らしたために、大気中の濃度が急上昇、
これが、大気汚染や地球温暖化の最も大きな原因になっています。
現在の地球は過去1,400年間で最も気温が高い状況だそうで、大雨、干ばつ、
水位の上昇、海流の変化、台風の大型化・・・とさまざまな災厄を招いています。
このままのペースで温暖化が進むと、2100年には平均気温が5.8℃も上昇し、
氷河が溶けて海水面が88cmも高くなる、との試算もあります。
東京湾沿いの江戸川区、中央区はもとより、荒川、北、足立区辺りも
大雨が降れば水没することになってしまいます。

この状況を食い止めようと、温暖化防止、脱炭素の動きが世界中で進んでいます。
化石燃料(石油や石炭など)を使う火力発電を、水力・風力・太陽光のような
再生エネルギーにシフトしていくことや、ガソリン車を廃止してEVに、
とにかく、のん気なことを言っていられる状況ではありません。

現在、日本の発電量で最も多いのは火力でおおよそ75%、
水力・風力・太陽光等排出ガスを出さない再エネは、僅か18%にとどまります。
菅前首相は昨年10月、温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする
「カーボンニュートラル(脱炭素)宣言」を表明しましたが、
途中の2030年度時点の再エネ電源比率は22~24%、
こんなにのんびりした計画を出しているのは、わが国くらいのものです。
欧州連合(EU)は今年、2050年までに二酸化炭素をゼロにする
「カーボンニュートラル」を達成するための一連の計画を発表しています。
さすがに能天気すぎると反省したのか(?)、今春の気候サミットでは、
温室効果ガスについて「50%削減の高みに挑戦する」と表明しましたが、
これを受けて見直された計画の再エネ比率は36~38%、まだまだという感じです。

便利さや快適さを最優先したことが、結果的に地球を壊してきたと気付いた今、
干ばつや山火事が頻発しないように、猪や猿や熊が人里に下りなくても
食べ物を確保できるように、クリーンな地球を取り戻すことは、
壊した人間の自己責任なのです。

事業活動のすべての電力を再エネでまかなおうとする国際的な企業の中でも、
アップルやアマゾン、グーグルなど世界をリードする企業は、
2050年では遅すぎる、2030年までに再エネ100%にするべきだと
目標を明確に掲げ、実行に移しています。
影響度の高い企業がこぞって地球を守ろうとしているのに、日本だけが
対岸の火事といった雰囲気で、手をこまねいていることは許されません。
トヨタや日産、規模の大きな企業に頑張っていただくことは当然ですが、
私たちも、日常生活ですぐできることから手をつけなければなりません。

例えば、ちょっとした買い物なら、ガソリン車を使わず自転車や徒歩で。
庭やベランダには、小さくても花や緑の鉢植えを置いてみませんか?
自転車や徒歩なら排ガスには無縁、植物はCO2を吸収してくれます。
また、戸建てに太陽光パネルを設置しなくても、個別の電気契約があれば
再エネの電気を買うことで、自宅の電気を再エネにできます。
エアコンの節電、シャワーの節水、ストーブの節油、家庭ごみの削減・・・
できることだらけだということに気付きます。

一滴の水、それがなければ大海もまたない。マザー・テレサの言葉でしたね。
便利さに甘え環境を壊してきた私たち、一個の鉢植えから始める勇気が大事です。

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J's B-press VOL.101(2021.08.31)

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【 1 】コラム『明鏡止水』 ~論語と算盤~

桜の季節を少し過ぎたころ、ぶらりと渋沢史料館を訪れてみました。
昭和初期まで渋沢栄一翁がお住まいになっていた飛鳥山邸跡を
史料館として一般に開放しています。(現在はコロナのため予約制です)
出自は埼玉の農家でありながら幕臣にとりあげられ、官僚、実業家、
篤志家として歩み、日本の近代化に多大な貢献をした渋沢翁です。
足跡の詳細はネットに溢れていますのでお調べ頂くことにして、
渋沢翁の経営哲学として講演録に残された「論語と算盤」、
その一節にほんの少し触れてみたいと思います。

「論語と算盤」の「論語」は、古代中国の道徳思想家・孔子が残した言葉を、
お弟子さんたちが後の世に編纂したものです。
良識、コンプライアンス、モラル、エチケット、マナー・・・・・・
まあ、人間愛と理想社会を実現するための考え方総集編と受け止めていただき、
あまり堅苦しく考えないことにしましょう。
それに「算盤」、いわゆる商売、事業経営を通じて経済的な潤いを求めること、
算盤は利益の追及という意味です。
渋沢翁の揮毫「道徳経済合一」、企業経営とは、正しく発展する社会の
将来のためにあってこそ、存在意義があるとして、
講演録ではそれをわかりやすく「論語と算盤」としています。
世のため人のためにならない事業で儲けるくらいなら貧乏で結構、
お金にはたくさんの力があるが、残念ながらお金そのものに心はない。
使う人の心次第で良くも悪くもなる。社会の幸福のためになる
お金の使い方が大事である、という渋沢翁の名言です。

いまマスコミでSDGsやESGといった文字が氾濫していますが、
儲けのためなら環境破壊も省みない身勝手な企業経営の結果なのでしょう。
今日的課題を、渋沢翁はとうに気づいていたということですね。

渋沢翁が学び、人生の基本姿勢として貫いた論語ですが、
その「道徳」の項には、「お金を稼ぎ、儲けることは不道徳である」
との表現があります。
世事に疎い当時の学者たちは、孔子のおっしゃることに間違いはない、
商売は卑しいもの、不道徳なものだと、硬直的に決めつけてしまいました。
しかし社会の変化に伴い、人類の進歩に必要な事業や公益優先の事業、
鉄道・銀行・電信電話・教育、あらゆる分野の殖産は、
利益を追求しなければ成り立たなくなってしまうことに気づきます。
つまり、大政奉還の後の資本主義社会で商売や企業経営をする上では、
ビジネス不道徳論は考え違いであることに気づいたわけです。
それがかの「論語」の一文であっても、勇気をもって道を改めたことが
渋沢翁の偉大な功績でありました。

また、「世の中の人が自分たちの過去のみを顧みて、新たな考え方の後進を
認めて育てなければ、世の中の進歩はまったく止まってしまう。同時に、
後進者も若き時代にもっと勉励しなければならない。老いも若きも、
時代の動き、進み方をよく見て将来への判断を誤らないようにすることこそ
大切なことなのだ」・・・変化に学び習う、実に味わいのある言葉ですよね。
5G・AI・DX・・・信用金庫を取り巻く環境も大きく変化しています。
変えるべきもの、変えてはいけないものをしっかり見極めて、
道を誤らないようにする必要を強く感じる昨今です。

現代日本の屈指の企業500社以上に、時代の息吹をもたらした渋沢翁、
数多く含蓄のある名言が残されています。
飛鳥山渋沢史料館、渋沢家の家紋「柏」のタイルに飾られた青淵文庫、
樹々の緑が都会の喧騒をつかの間忘れさせてくれます。
お暇な折に、ぜひ足をお運びになってみて下さい。

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